ラムプの夜
本文約5,800字 ・ 読了時間 約12分
あらすじ(AIが作成しました)
春の夜、停電した森近くの一軒家で姉妹が古いランプを灯す。かつて共に影絵で遊んだ亡き弟を偲ぶ二人の前に、旅人、泥棒、そして弟の面影を宿した少年が次々と現れる。ランプの明かりが消え電灯が戻ると彼らは姿を消し、残された手袋から姉妹は一連の出来事が幻影であったことを悟る。日常の中で失われた存在を想い描く心の揺らぎを、光と影の演出を通して幻想的に描く。
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人 姉
妹
旅人
法螺吹きの泥棒
少年
所 森の近くの一軒家。姉妹に
あてがはれた小さい勉強室
時 春になつたばかりの風の夜
(机を向ひあはせて姉と妹が、一つのスタンドの光で勉強してゐる。机上には桜草の鉢がおいてある。)
(風の音)
妹 ひどい風ね。 (汽車の音)
妹 九時の上りかしら。 姉 さうぢやないわ、八時十分の下りよ。 妹 ああ、早くお父さん達帰つていらつしやらないかなあ。 (スタンド消える)
妹 あら、停電よ。 姉 電球がきれたんぢやないか知ら。 (スイツチをひねつて見る)
妹 停電だわ。いやんなつちまふ。 姉 ぢき点くからぢつとしてらつしやい。 (間)
妹 つきやしないわ。風で電線が切れたのよ、きつと。 姉 さうか知ら。 妹 あら、何かあそこに光つてるわ青白く。 姉 どこ? 妹 ほら、窓の向かう。 姉 沼よ、あれは。月の光を反射してるのよ。いいなあ。すつてき。詩が出来さう。 妹 ちえつ。文学少女はこれだからいやだ。姉さん、お父さんのラムプつけませう。 姉 油まだあつたか知ら。 妹 きつとまだあるわ。 (姉、立つて手探りで壁伝ひにゆく。退場。)
妹 (「春が来た」を口づさむ。) (姉、ラムプを持つて帰つて来る。)
妹 ごくらう/\。すぐわかつた? 姉 椅子にあがつてもたらなかつたからテーブルの上にあがつちやつた。もうちよつとでお父さんの大事なユキ坊の写真を蹴とばしちまふとこだった[#「だった」はママ]。内緒よ。 (その間にラムプをつける)
妹 こんな古ぼけたラムプ、いつもは何にもならないと思つてゐても、こんなときには間にあふわね。やつぱり昔のものはいい味があるわ。フランス製だつたけね。 姉 えさう。お父さんが始めての航海でマルセーユにいつたとき、そこの裏町の古道具屋で見つけたんですつて。ルヰ十四世時代のものらしいつていつてらしたわ。 (間)