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TORENDIA

力餅

本文約65,500字 ・ 読了時間 約131分

あらすじ(AIが作成しました)

作者が少年のための読本として綴った本作は、著者がこれまで見聞きしてきた数々の思い出や童話を収める。峠で旅人の疲れを癒やす力餅のように、成長の過程にある幼い読者を力づけたいという願いが込められている。日常の風景や古い言い伝えから着想を得た全八十五の物語は、読者が時を経て成長した後に読み返しても心に響くよう、あえてゆとりを持たせて仕立てられており、作者から次世代へ贈る贈り物としてまとめられた一冊である。

島崎藤村

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はしがき

わたしが皆さんのようなかたとおなじみになったのは、以前に三冊の少年の読本を書いた時からでした。わたしも皆さんにお話しするのを楽しみに思うものですから、こんど新規に一冊の読本を用意しました。

もともとわたしの童話は遠い国の旅から生まれてきたのです。わたしはそんな旅にいて、外国の少年や少女を見るにつけても、日本のほうにるすいする自分の子供らのことをよく思い出しました。長いおるすいもさみしかろうと思いまして、何か外国のほうで見たり聞いたりしたお話を書いて、それを子供らに送りたいと思っていました。遠い旅の空ではそれも思うように果たせませんでしたが、ぶじに日本へ帰ってきまして、自分の子供らに話しかける父のものがたりとして、遠い国のみやげばなしを書きました。それがわたしの『幼きものに』です。

早いものですね。それから、あの『ふるさと』を書いたのはもはや二十二年前、『おさなものがたり』を出したのは十八年前にもなりますよ。皆さんの中には、わたしの『ふるさと』や、『おさなものがたり』を読んでみてくだすったかたもありましょうか。そしてわたしの子供らを覚えていてくださるかたもありましょうか。その子供らがもうみんなおとうさんになったり、おかあさんになったりしています。

ほんとに、月日のたつのは早いものですね。今に孫たちがわたしの童話を読んでみるような時もやって来ましょう。子に話しかけ、また孫に話しかけるということも、楽しいではありませんか。

それは、さておき、今お話ししたように、そもそもわたしが童話を書こうと思い立ったのは遠く国から離れ、自分の子供からも離れている時でありましたが、それから少年のために物書くことの楽しみを知り、書いてみれば自分にも書けてうれしく思いました。そんなわけで、ひとり自分の子供らに話しかけるばかりでなく、広く世の幼い人たちにも、またその親たちにも読んでみてもらおうという心を持つようになったのです。

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