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TORENDIA

時男さんのこと

本文約6,400字 ・ 読了時間 約13分

あらすじ(AIが作成しました)

町はずれに住む少年は、隣に引っ越してきた年上の時男と下駄の鼻緒を直してもらったことをきっかけに親しくなる。継母のもとで遠慮がちに暮らす時男は、少年の家で安らぎを見出し、二人は互いに心を通わせる。ある日、二人は洞穴へ探検に出かけ、暗闇の中で迷う危機に直面するが、協力して帰還する。やがて時男は奉公のために町を離れることになるが、二人の少年時代を通じた静かな交流と絆を描く。

土田耕平

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🎧 時男さんのこと / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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時男さん――それは私の幼な友だちの名まへです。年は三つ違ひで、私が尋常科三年生の時、時男さんは六年生でありました。だから、お友だちといふよりも、まあ兄さんのやうなものでした。

私は、父と母と三人暮しで、町はづれの借家に住んでゐました。そこから、父は町のお役所へ、毎日通つてゐました。時男さんの家は、私の家から三軒目の隣でした。私が三年生になつたばかりの頃、時男さんは、外からそこへ移つて来たのであります。時男さんの家は、私と同じやうに父母と三人暮しで、そのお母さんといふ人は、いつ見ても大そうきれいな身なりをしてゐました。それは時男さんにとつては、ほんとのお母さんでない、といふことを、時男さんがたが隣へ移つて来た時、私は母から聞きました。

時男さんは、移つて来た次の日から、私と同じ学校へ通ひました。けれども、二人は組が違ひましたし、学校のかへりも私の方がいつも早くありましたので、一緒になることは滅多にありません。朝起きて、庭さきで顔を洗ひながら、時男さんの家の方を見ると、竹箒で外を掃いてゐる時男さんの姿が見えることがあります。そんな時は、互に顔を見合せて、ニツコリします。けれどたゞそれだけのことで、始めのうちは二人は別に親しい仲ではありませんでした。

時男さんと友だちになつたいとぐちは、ほんの一寸したことです。何でも土曜日のことで、雨あがりの道が、大そうぬかつてゐました。学校から家へ帰る途中、少しの間田圃の中の道を通るのでありますが、私はそこで、下駄の鼻緒を切つてしまひました。連はないし、どうしたらよいだらうかと、しばらく佇んでゐました。すると、そこへ時男さんが来ました。やはり学校がへりで(その日は土曜日だから、かへり時間が同じだつたのです)鞄を肩にかけて何か小声で唱歌をうたひながらやつて来ましたが、私を見て、

「緒が切れたの?」

と云ひました。私がうなづきますと、

「一寸待つてゐな。」

と云つて、時男さんは、じぶんの腰につけてゐた手拭の端を引き裂いて、私の前へかゞみました。

「肩につかまつてゐな。」

と云ひますので、私は片足を持ちあげて、時男さんの肩によりかかつてゐますと、

「もういゝよ。」

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