TRENDIA CLASSIC

拾うた冠

宮原晃一郎

1 / 6

みなさん神社の神官がお祭の時などにかぶつてゐる帽子をご存じでせう。又あれが冠といふものであることもご存じでせう。あの冠は位によつて種類があります。丁度金筋の何本はひつた帽子は大将で、何本のは中将であると今軍人の帽子で官の位がわかるのと同じことです。

昔、天皇陛下がまだ京都におすまひなされたときのことです。或時、京都に火事がありました。その日はあひにく風が強いのでちよつとのうちに市中に拡がりまして、誠に恐れ多いことですが天皇陛下のおいで遊ばす宮城にも、とう/\火が燃えつきました。宮城の人達は天皇陛下や、皇后陛下や、皇太子、皇子、皇女殿下などを、それ/″\、危くない場所におつれ申すことになりました。けれどもご存じのとほり、あの百人一首の絵にかいてあるやうな、長い、だぶ/\の着物を男も女も着てをりますから、なか/\思ふやうに活溌な働きが出来ません。そのうへに今のやうにちやんと普段から支度がとゝのへてありませんから、たゞ恐がつて、慌ててばかりゐて、一向だめでした。宮城にゐる人達でも、下等の者は、自分達だけさつさと馬を曳き出して、逃げ出し、そして市中に出て、自分の行く先にちつとでも邪魔になるものは皆腰にさした太刀でスパリ/\と打ち切つて行きます。で、その騒ぎといつたら大変なものでした。

宮原晃一郎の他の作品