TRENDIA CLASSIC

行乞記

種田山頭火

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鶏肋抄

□霰、鉢の子にも(改作)

□山へ空へ摩訶般若波羅密多心経(再録)

□旅の法衣は吹きまくる風にまかす(〃)

雪中行乞

□雪の法衣の重うなる(〃)

□このいたゞきのしぐれにたゝずむ(〃)

□ふりかへる山はぐれて(〃)

――――

□水は澄みわたるいもりいもりをいだき

□住みなれて筧あふれる

鶏肋集(追加)

□青草に寝ころべば青空がある

□人の子竹の子ぐいぐい伸びろ(酒壺洞君第二世出生)

六月一日 川棚、中村屋(三五・中)

曇、だん/\晴れて一きれの雲もない青空となつた、照りすぎる、あんまり明るいとさへ感じた、七時出立、黒井行乞、三里歩いて川棚温泉へ戻り着いたのは二時頃だつたらうか、木下旅館へいつたら、息子さんの婚礼で混雑してゐるので、此宿に泊る、屋号は中村屋(先日、行乞の時に覚えた)安宿であることに間違はないが、私には良すぎるとさへ思ふ。

すべてが夏だ、山の青葉の吐息を見よ、巡査さんも白服になつた、昨日は不如帰を聴き今日は早松茸を見た、百合の花が強い香を放ちながら売られてゐる。

笠の蜘蛛! あゝお前も旅をつゞけてゐるのか!

新らしい日、新らしい心、新らしい生活、――更始一新して堅固な行持、清浄な信念を欣求する。

樹明君からの通信は私をして涙ぐましめた、何といふ温情だらう、合掌。

・ほうたるこいほうたるこいふるさとにきた

此宿はよい、ていねいでしんせつだ、温泉宿は、殊に安宿はかういふ風でなければならない、ありがたい/\。

六月二日 同前。

雨、そして関門地方通有の風がまた吹きだした、終日、散歩(土地を探して)と思案(草庵について)とで暮らした。

午後、小串へ出かけて、必要缺ぐべからざるものを少々ばかり買ふ。

山ほとゝぎす、野の花さま/″\。

老慈師から、伊東君から、その他から、ありがたいたよりがあつた。

隣室の奥さん――彼女はお気の毒にもだいぶヒステリツクである――から御馳走していたゞいた。

自己を忘ず――そこまで徹しなければならない。

こゝはうれしい、しづかにしてさびしくない。

だん/\酒から解放される、といふよりもアルコールを超越しつゝある、至祷至祝。

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