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TORENDIA

行乞記

本文約64,000字 ・ 読了時間 約129分

あらすじ(AIが作成しました)

行乞記は、種田山頭火による行乞の旅を綴る随筆である。九州各地を巡りながら、読経や酒に救いを求めつつ孤独な漂白の生活を送る筆者の日々を描く。慣れない旅路で足の痛みや精神の衰弱に苦しみながらも、各地で出会う人々との交流や自然の風景、俳句の創作を通じて、自己の内面と向き合う様子を収める。旅先での宿や酒との関わりをありのままに記し、生活を一新しようとする真摯な心境の変化を克明に映し出している。

種田山頭火

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死をまへの木の葉そよぐなり

陽を吸ふ

死ぬる夜の雪ふりつもる

生死のなかの雪ふりしきる

十二月廿二日 晴、汽車で五里、味取、星子宅。

私はまた旅に出た。――

『私はまた草鞋を穿かなければならなくなりました、旅から旅へ旅しつゞける外ない私でありました』と親しい人々に書いた。

山鹿まで切符を買うたが、途中、味取に下車してHさんGさんを訪ねる、いつもかはらぬ人々のなさけが身にしみた。

Sさんの言葉、Gさんの酒盃、K上座の熱風呂、和尚さんの足袋、……すべてが有難かつた。

積る話に夜を更かして、少し興奮して、観音堂の明けの鐘がなるまで寝つかれなかつた。

十二月廿三日 晴、冬至、汽車で三里、山鹿、柳川屋(三〇・中)

九時の汽車で山鹿まで、二時間ばかり行乞する、一年ぶりの行乞なので、何だか調子が悪い、途上ひよつこりS兄に逢ふ、うどんの御馳走になり、お布施を戴く。

一杯ひつかけて入浴、同宿の女テキヤさんはなか/\面白い人柄だつた、いろ/\話し合つてゐるうちに、私もいよ/\世間師になつたわいと痛感した。

十二月廿四日 晴、徒歩八里、福島、中尾屋(二〇・上)

八時過ぎて出立、途中ところ/″\行乞しつゝ、漸く県界を越した、暫らく歩かなかつたので、さすがに、足が痛い。

山鹿の宿も此宿も悪くない、二十銭か三十銭でこれだけ待遇されては勿体ないやうな気がする。

同宿の坊さん、籠屋のお内儀さん、週旋屋さん、女の浪速節語りさん、みんなとり/″\に人間味たつぷりだ。

十二月廿五日 曇、雨、徒歩三里、久留米、三池屋(二五・中)

昨夜は雪だつた、山の雪がきら/\光つて旅人を寂しがらせる、思ひだしたやうに霙が降る。

気はすゝまないけれど十一時から一時まで行乞、それから、泥濘の中を久留米へ。

今夜の宿も悪くない、火鉢を囲んで与太話に興じる、痴話喧嘩やら酔つぱらひやら、いやはや賑やかな事だ。

十二月廿六日 晴、徒歩六里、二日市、和多屋(二五・中)

気分も重く足も重い、ぼとり/\歩いて、こゝへ着いたのは夕暮だつた、今更のやうに身心の衰弱を感じる、仏罰人罰、誰を怨むでもない、自分の愚劣に泣け、泣け。

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