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TORENDIA

行乞記

本文約7,000字 ・ 読了時間 約14分

あらすじ(AIが作成しました)

僧・種田山頭火が、山口周辺を托鉢行脚した折の記録を綴る。炎天の下、各地で乞食行を重ねつつ、自然の情景やそこで出会った人々との交流をありのままに書き留める。山村での一夜や、宿屋でのつつましい食事、旅先で耳にした方言や見聞した風習など、放浪の生活を克明に描き出す。多くの句を併記し、禅的ともいえる歩みのなかで、行脚が自身に与えた恩恵や自然と一体化する心境を静かに振り返る。

種田山頭火

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七月廿八日

六時すぎ出立、道はアスフアルトの一路坦々。朝風が法衣の袖にはらんで涼しい。

九時から山口市の裏通行乞二時間。

鈴木の奥さんに御挨拶する、思ひがけなくお布施を頂戴して恐縮した。

野田神社、豊栄神社へ参拝、境内は掃目もあざやかに蝉しぐれのなごやかさ。

山口県庁の建物はおちついてゐて好きだつた、背景の山のすがたも気にいつた。

サベリヨ記念碑を観た。

寺内文庫で新聞を読みながら休む。

二時から六時まで、宮野仁保を行乞して仁保上郷の河内屋といふ安宿へ泊つた、山村のしづかな家でうれしかつた、行程五里。

木賃 三十銭。

夕飯(鯖の煮付、茄子の煮込、沢庵漬) 朝食(味噌汁、煮豆、沢庵漬)

所得(銭三十銭、米三升)

今夜はお布施のおかげで、日本酒三合いたゞく。

△途上、鮮人の一家族に心を惹かれた、世帯道具を背負うて移動する道中らしい、蒲団、飯釜、行李、子供、そして弱者劣敗者である彼等は私にまで挨拶した、私は彼等に対して好感よりも哀感を持つた。

或る農家で、おかみさんが皿に米をいつぱい盛つてくれた、くれやうが多すぎるから何かあるなと思つてゐたら、果してさうだつた、小さい子に鉄鉢をいたゞかせてくれといふ、消災呪を唱へてあげた、此頃は鉄鉢をさゝげてあるく坊主も稀だし、また子供が頭剃を嫌はない禁厭として鉄鉢をいたゞかせてくれといふ事も稀である。

△今日はめづらしくコヤトといふ方言を聞いた、コヤトは餓鬼とおなじく、子供に対する親愛と軽蔑とを意味する言葉である、ホイトといふ方言のやうにおもしろいと思ふ。

・生きのびて蔦のからんだ門のうち

炎天の地べたへ人間をゑがく

・水に水草びつしり

・ぼろきてすずしい一人があるく

・蝉しぐれあふれるとなくあふれてゐる水

・ここが国ざかひで涼しい風

山かげの夕凪の魚がはねるさゞなみ

・ながい豆も峠茶屋のかなかな

河鹿にはおそかつた蜩の安宿で

枕がひくうて水音がたえない一夜

たつた一軒家の白木槿咲いてゐる

・水瓜はごろりと日ざかりの畑

(乞食坊主の頭陀のおもさよ)

水音のかなかなの明けてくる

・窓は朝蜘蛛のうごかない山がせまり

ながれ、寝苦しかつた汗をながす

・みんなたつしやでかぼちやのはなも

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