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TORENDIA

行乞記

本文約9,100字 ・ 読了時間 約19分

あらすじ(AIが作成しました)

種田山頭火の日記「行乞記」は、七月の炎天下における托鉢の旅と、庵での質素な独居生活を綴る。敬治宅での温かな交流や酒と句を通じた自己の深掘り、友の変報に触れた際の悲痛な述懐が記される。本作は、一衣一鉢の旅路の中で、自然の移ろいと自身の内面的な変化を静かに見つめつつ、酒と俳句を唯一の支えとして生きる一人の求道者の日々の営みを描く。

種田山頭火

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七月十四日

ずゐぶん早く起きて仕度をしたけれど、あれこれと手間取つて七時出立、小郡の街はづれから行乞しはじめる。

大田への道は山にそうてまがり水にそうてまがる、分け入る気分があつてよい、心もかろく身もかろく歩いた。

行乞はまことにむつかしい、自から省みて疚しくない境地へはなか/\達せない、三輪空寂はその理想だけれど、せめて乞食根性を脱したい、今日の行乞相は悪くなかつたけれど、第六感が無意識にはたらくので嫌になる。

暑かつた、くら/\して眼がくらむやうだつた。

林の中でお辨当を食べる、山苺がデザートだ。

水を飲んだ、淡として水の如し、さういふ水を飲んだ、さういふ心境にはなれないが。

蕨といふ地名はおもしろい。

予定通り、二時には敬治居の客となつた、敬坊は早退して待つてゐてくれた、さつそく風呂を頂戴する、何よりの御馳走だつた、そして酒、これは御馳走といふよりも生命の糧だ。

敬坊はよい夫、よい父となりつゝある、それが最もうれしかつた、人間は落ちつかなければ人間を解し得ない、人間を解し得なければ人間の生活はない。

おはぎ餅はおいしかつた、餅そのものもおいしかつたが、それを食べる気持、それを食べさせてくれる気持がとてもおいしかつた。

生活の打開と共に句境も打開される、私も此頃多少の進展を持つたらしい。

暑くて、腹がくちくて寝苦しかつた。

銭 二十一銭

今日の所得          行程五里。

米 一升二合

朝月暈をきてゐる今日は逢へる

朝風へ蝉の子見えなくなつた

朝月にしたしく水車ならべてふむ

・水が米つく青葉ふかくもアンテナ

夾竹桃赤く女はみごもつてゐた

合歓の花おもひでが夢のやうに

・柳があつて柳屋といふ涼しい風

汗はしたゝる鉄鉢をさゝげ

見まはせば山苺の三つ四つはあり

・鉄鉢の暑さをいたゞく

・蜩よ、私は私の寝床を持つてゐる

七月十五日

曇、降りさうで降らない、すこし憂欝。

八時から十一時まで大田町行乞。

所得――銭四十四銭に米一升三合

午後は東御嶽観音様へ詣でる、青葉、水音、蝉がなき鶯がなく、とてもしづかな山村だつた、そこから赤郷へ河鹿聴きに出かけたが、暑くはあるし、興味もうすらいだので途中から引き返す、徃復三里の散歩だ。

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