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TORENDIA

沢氏の二人娘

本文約30,400字 ・ 読了時間 約61分

あらすじ(AIが作成しました)

東京の郊外にある木造洋館で、元副領事の沢一寿は二人の娘、悦子と愛子と複雑な関係の中にいる。訪ねてきた知人や娘たちとの会話の中で、互いの抱えるわだかまりや冷え切った感情が露呈する。姉の悦子は妹の愛子と心を通わせようとするが、愛子は姉の同情や関わりを拒絶し、皮肉をぶつける。食卓を囲む約束も果たされぬまま、娘たちはそれぞれの態度で父の元を去り、一寿は孤独に食事を摂る。

岸田國士

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沢 一寿

悦子  その長女

愛子  その次女

奥井らく  家政婦

桃枝  その子

神谷則武  輸入商

田所理吉  船員、悦子等の亡兄の友人

東京――昭和年代

[#改ページ]

一

某カトリツク療養院の事務長、元副領事、沢一寿(五十五歳)の住居。郊外の安手な木造洋館で、舞台は白ペンキ塗のバルコニイを前にした、八畳の応接間兼食堂。

古ぼけた、しかし落つきのある家具。壁には風景画と、皿と、それらの中に、不調和にも一枚の女の写真が額にしてかけてある。三十五六の淋しい目立たない顔である。丸髷に結つてゐる。飾棚には、細々した洋風の置物。記念品らしい白大理石の置時計。バルコニイの手摺に色の褪せた副領事の礼服が干してある。

十月の午後。

家政婦奥井らく(三十八歳)が、卓子の上で通帳を調べてゐる。

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