TRENDIA CLASSIC

バキチの仕事

宮沢賢治

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「ああそうですか、バキチをご存じなんですか。」

「知ってますとも、知ってますよ。」

「バキチをご存じなんですか。

小学校でご一緒ですか、中学校でご一緒ですか。いいやあいつは中学校なんど入りやしない。やっぱり小学校ですか。」「兵隊で一緒です。」

「ああ兵隊で、そうですか、あいつも一等卒でさね、どうやってるかご存じですか。」「さあ知りません。隊で分れたきりですから。」

「ああ、そうですか、そいじゃ私のほうがやっぱり詳しく知ってます。この間まで馬喰をやってましたがね。今ごろは何をしているか全く困ったもんですよ。」

「どうして馬喰をやめたでしょう。」

「だめでさあ、わっしもずいぶん目をかけました。でもどうしてもだめなんです。あいつは隊をさがってからもとの大工にならないで巡査を志願したのです。」「そして巡査をやったんですか。」

「それぁやりました。けれども間もなくやめたんです。」

「どうしてやめたんだろうなあ、何でも隊に来る前は、大工でとにかく暮していたと云うんですが。」

「それゃうそでさあ大工もほんのちょっとです。土方をやめてなったんです。その土方もまたちょっとです。それから前は知りません。土方ばかりじゃありません、飴屋もやったて云いますよ。」

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