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TORENDIA

朝に就ての童話的構図

本文約1,400字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

霧が降る苔の上で、蟻の歩哨が任務に励んでいる。そこへ子供の蟻二疋が通りかかり、突如として現れた巨大な白い建物を指さして驚く。歩哨は驚き、ただちに上層部へ報告するよう子供たちに命じる。しかし、それは「きのこ」と呼ばれるものだと判明し、子供たちが戻ってくる頃には倒れてしまう。その後も奇妙なきのこが次々と現れる様子を蟻たちが眺める中、大きな赤い日が昇り、歩哨は再び任務に就く様子を描く。

宮沢賢治

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🎧 朝に就ての童話的構図 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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苔いちめんに、霧がぽしやぽしや降つて、蟻の歩哨は、鉄の帽子のひさしの下から、するどいひとみであたりをにらみ、青く大きな羊歯の森の前をあちこち行つたり来たりしてゐます。

向ふからぷるぷるぷるぷる一ぴきの蟻の兵隊が走つて来ます。

「停まれ、誰かツ」

「第百二十八聯隊の伝令!」

「どこへ行くか」

「第五十聯隊 聯隊本部」

歩哨はスナイドル式の銃剣を、向ふの胸に斜めにつきつけたまま、その眼の光りやうや顎のかたち、それから上着の袖の模様や靴の工合、いちいち詳しく調べます。

「よし、通れ」

伝令はいそがしく羊歯の森のなかへ入つて行きました。

霧の粒はだんだん小さく小さくなつて、いまはもううすい乳いろのけむりに変り、草や木の水を吸ひあげる音は、あつちにもこつちにも忙しく聞え出しました。さすがの歩哨もたうとう睡さにふらつとします。

二疋の蟻の子供らが、手をひいて、何かひどく笑ひながらやつて来ました。そして俄かに向ふの楢の木の下を見てびつくりして立ちどまります。

「あつあれなんだらう。あんなとこにまつ白な家ができた」

「家ぢやない山だ」

「昨日はなかつたぞ」

「兵隊さんにきいて見よう」

「よし」

二疋の蟻は走ります。

「兵隊さん、あすこにあるのなに?」

「何だうるさい、帰れ」

「兵隊さん、ゐねむりしてんだい。あすこにあるのなに?」

「うるさいなあ、どれだい、おや!」

「昨日はあんなものなかつたよ」

「おい、大変だ。おい。おまへたちはこどもだけれども、かういふときには立派にみんなのお役に立つだらうなあ。いゝか。おまへはね、この森を入つて行つてアルキル中佐どのにお目にかゝる。それからおまへはうんと走つて陸地測量部まで行くんだ。そして二人ともかう云ふんだ。北緯二十五度東経六厘の処に、目的のわからない大きな工事ができましたとな。二人とも云つてごらん」

「北緯二十五度東経六厘の処に目的のわからない大きな工事ができました」

「さうだ。では早く。そのうち私は決してこゝを離れないから」

蟻の子供らは一目散にかけて行きます。

歩哨は剣をかまへて、じつとそのまつしろな太い柱の、大きな屋根のある工事をにらみつけてゐます。

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