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TORENDIA

劇壇の新機運

本文約2,400字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

自由劇場の試演にて上演されたイブセンの戯曲『ボルクマン』の舞台を批評し、日本における新劇運動の意義を論じる。演劇界の沈滞に刺激を与える画期的な試みとして評価しつつ、イブセン特有の構成技術への関心や、舞台表現における課題を考察する。また、今後この劇場が優れた翻訳劇や創作劇を継続して上演することで、日本の劇壇に新たな風を吹き込み、演劇文化の発展に貢献することへの期待を綴る。

蒲原有明

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🎧 劇壇の新機運 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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わたくしは劇壇の新しい運動が自由劇場の試演とまで漕ぎつけたことに就ては、勿論贊意を表し且つその成功を祈つてゐた。それと同時にかういふ運動は我邦に於て全く破天荒のことではあるし、第一囘の試演が蓋を開けるまではこの運動の効果に對し多少の疑懼を擁かないでもなかつた。即ち成功とは云はれぬにしても、劇壇の沈滯に對する刺戟ともなり、新藝術のために貢獻するところを期待しつゝ、果してそれがどうであらうかと、傍から觀てゐて危ぶんでゐたからである。それが愈實現されたのを見て兎に角大成功とは言はれぬまでも、その出來ばえの稍成功に近い域に及んでゐたことは、劇壇のために喜びに堪えぬところでもあるし、同時にまた小山内薫氏並に左團次一座のために祝盃を擧げてもよい次第である。わたくしはこの試演を見て、先づ以てこの具合ならば、第二第三の試演を續けて行くうちに、我邦でも眞に新しい創作劇の上場を見ることが可能であらうと感じて、ふとそれを豫想して見たことである。

この第一囘の試演に用ゐたイブセンの「ボルクマン」は、わたくしにとつて忘れ難い追憶がある。それと云ふのも、この「ボルクマン」はイブセンの作中でわたくしの讀んだ最初のものであつたからである。イブセンの戯曲、その曲に含まれた人生觀や、脚本としての技巧などについては、既にいろいろの評論もあつたことであるし、わたくしとても略知つてはゐたが、特に研究して見ようと云ふ氣も起さずに過して來たのである。然るに島崎藤村さんが信州の小諸から、これを是非讀んで見ろと、わざわざ小包で送つてくれたのが、この「ボルクマン」である。わたくしは藤村さんの好意を謝しつゝ深い思ひを以てこの脚本を讀み了つた。これがイブセンを讀んだ最初である。その脚本が今我邦の舞臺に始めてかけられるといふのである。わたくしが少なからぬ希望と喜びと無上の興味とを以て、この試演を觀たことに不思議はない。

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