遊羽雑感
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あらすじ(AIが作成しました)
山寺を訪れた著者が、聖僧慈覚大師による開山や教化の歴史、芭蕉翁の名人たる所以、さらに四大観をはじめとする山寺の絶景を綴る。奥羽に対する従来の武勇の地という認識を改め、聖人の徳や芭蕉の俳諧、そして奇岩怪石と老松巨杉が織りなす仙閣のような風光の魅力を論じる。山寺の一山が持つ多様な景観と野趣に富んだ風情を称賛し、自然と信仰が融合した独自の境地を情緒豊かに描く紀行随筆。
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一
古來、奧羽は、日本武尊を始めまつり、田村將軍、源頼義、義經など、英雄豪傑が武を以て王化に浴せしめたる處とのみ思ひしは、げに皮相の謬見なりき。われ山寺に遊びて、始めて知る、前九年の役に先だつこと凡そ二百年、早や已に絶代の聖僧慈覺大師が、徳を以て奧羽の人を救ひたりしことを。大師は、實に千年の前に立石寺を創めて、衆生を濟度したる聖人也。山寺名勝志に據れば、大師は、最上川の御殿と稱する處を開鑿して瀦水を排し、沮洳卑濕なる村上四郡を耕田と爲せり。なほ麻布製造の法をも教へたりとの事也。仰ぐべきかな慈覺大師。
二
山は必ずしも高きを尚ばず、樹あるを尚ぶといへり。國土は必ずしも、大政治家、大實業家、大軍人を出だすを尊しとせず、大徳の聖人を出だすを尊しとす。
三
山寺に芭蕉翁の蝉塚あり。彼の有名なる『閑かさや岩にしみ入る蝉の聲』の句は、翁が山寺にて作りたる也。余は翁の『五月雨を集めて早し最上川』の句を愛す。山形人士の舟遊に伴はれて最上川に遊びしに、人あり、水に臨める、宏壯なる家を指して曰く、芭蕉翁、當年かの家に宿れり。その筆蹟、今なほ存すと。われ思ふに、才にて進みたるの極は所謂上手也。才を離れて、始めて所謂名人となるを得べし。何事も、名人の域に達すれば、共に談ずるに足る。翁の如きは、俳の聖也。即ち名人の域に達したる人也。
四