本文へ移動
TORENDIA

夏と人形

本文約310字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

物識りの旅行家が語る、四国の路傍で出会った至妙な傀儡師の記憶。芝居を終えた人形の額に滲む汗という不思議な描写を通して、名も知られぬ人形師の霊妙な技を伝える坂口安吾の掌編。

坂口安吾

速度
🎧 夏と人形 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 1

貴方は南国の傀儡を御存じですか? (と物識りの旅行家が私に話してきかせました)

文楽の舞台に比べては余り原始的でみすぼらしいものの、まことの名人気質と名も知られない人形造りが一心こめて残した霊妙な人形はむしろ棄てられた傀儡師に伝へられてゐるのです。

七年前のことです。四国の淋しい路傍で最も神秘な傀儡師を見ました。至妙な演戯よ! 私の心は涯もない夢幻の奥へ誘はれてゐたのです。けれども終生忘れることのできないのは(そして彼は暫く深々と感動の瞑目をつづけてゐました)ふと自分に返つたとき、芝居を終へた人形の額に汗のジットリ滲んでゐるのを見出したのでした。

私は物識りの旅行家の額には汗なぞ滲まないので、彼の話をきくのが好きです。

完

坂口安吾の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本