本文へ移動
TORENDIA

安吾人生案内

本文約13,100字 ・ 読了時間 約27分

あらすじ(AIが作成しました)

雑誌の企画で撮影された自身の写真に対し、易者が下した人相判断を題材に、著者自身の人生観や人間観察の方法を綴る。人相学における合理的な判断の限界を指摘しつつ、人の未来は性格のみならず環境や個人の意志によって変容し得るものだと論じる。また、文学者として人間を観察することの意義や、自身の商売に対する姿勢を通じ、不確実な人生をいかに生きるかという実存的な問いを独自の視点で展開する。

坂口安吾

🎧 まだ音声版はありません

リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 16

不見転観相学  桜井大路

この写真(次頁の)から観た処では、額、眉、耳と何れにも非常に強く反家庭的な相が感じられる。特に顔全体の大きな特徴を成している鼻によくない相がある。この種の鼻を持つ人は、金を稼ぎ出す力は持っていても、常に散じてしまう人である。又、大変に短気であり、若くして家を捨ててしまう生え際をしている。

尚、一番強く出ているのは常識的な人間ではない、という点で他人とは絶対に相容れない人であり、誰れにでも好かれる、という人ではないが少数の目上の人には大変に愛される人ではある。

この人は孤独な人であるから、一人で出来る仕事を撰べば、四十台にして一応の名を成すが、四十五、六、七という時期は仕事と金の両面で内面的に悩むときである。五十台の初めは多少伸び悩むが、五十六、七にして大を成す人である。若い時から苦労とか経験とかいう点には遺憾がないから、それが仕事の上に生きてくるのである。額を観ても苦労が身についた人と云える。

この人の四十台までを災いしたものは、その大部分が家庭的問題である。尤も家庭的に種々煩雑な点は一生涯を通じてのものではあるが、四十台以後は非常に勢い盛んな時であるから、それを押し隠してしまうのである。しかし、年と共に環境の寂しさが増すという点は、特に附言しておく。

性格としては他人には大いに良く、義気もあるが、又一面、非常に細かく物を穿鑿する癖もある。所謂、外面がよく内面の悪い人である。言動は派手で勇ましいが、内心では常に細心の注意を怠らない人でもある。

人を大勢使うという人相ではないが、賑やかなことが大好きな人である。

長生きをする吉相もあるが、恋愛をすれば必ず苦労する相をも併せ持っている。

最後に総括すれば、善悪二相が極端に現れ、二十四五、三十二三、三十七八には手痛い苦しみをし、これからも紆余曲折の生涯を辿る人ではあるが、仕事は立派に成しとげ、世間のためになる人物である。しかし孤独であるが故に家庭的ではない。是非一度実物に会ってみたい興味を覚える。

★

私が徹夜の仕事をしてフラフラしている朝方にオール読物の廻し者の写真師が来て、易者用の写真をうつします、という。

坂口安吾の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本