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TORENDIA

カストリ侯実録

本文約15,500字 ・ 読了時間 約31分

あらすじ(AIが作成しました)

フランス革命の混乱で幽閉されたルイ十六世の王子ルイ・シャルルは、タンプルの塔で虐待を受け、獄中で死んだとされる。しかし、後にノオンドルフという人物が自身の正統性を主張し、カストリ侯爵を名乗ってフランス王位の継承を訴える動きが生じる。本作は、このルイ十七世を巡る救出説や身代り説、さらには王位継承を主張した者たちの数奇な生涯と、革命下の悲劇を多角的に辿り、その実像と虚実を検証する歴史的考察を収める。

久生十蘭

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全十二巻の厖大な艶笑自叙伝「回想録」Mmoires を書くことに生涯を費した色情的好事家ジォウァンニ・ヤコポ・カサノヴァと霊媒術をもってルイ十六世の宮廷で華々しい成功をし、「マリイ・アントアネットの首飾事件」に連坐してバスチーユに繋がれ、後、ローマで獄死した天才詐欺師バルサモ・ディオ・カリオストロ伯爵とルイ・シャルル・ド・カストリ侯爵の三人をある小史作者は十八世紀末から十九世紀中頃までの三大変種といっている。

三人ながら姓がCではじまっているところに作者の特別な配慮があるわけなのであろうが、カストリ家(Maison de Castries)は南仏エロ県カストリに広大な荘園と城館を持つ中世紀以来の旧家で、城館はいまもそこに残っている。カストリ家の先祖はマルセーユの太守でありながらケイル・エド・デインなどに伍して地中海を荒しまわった海賊で、スタンダールが「赤と黒」でピラール師をして、「君は大貴族の邸に住んでいるくせに、カストリ侯爵がダランベールやルソオについていった言葉を知らないのか。(あいつらはなんにでも理窟をつける。そのくせ千エキュの年収もないんだ)」といわせている。ルイ十五世代の海軍元帥、ルイ十六世の代には海軍相だったこともあるそのカストリ侯爵である。

その子、ノオンドルフという独逸名もあるルイ・シャルル・ド・カストリ侯爵は全欧州に話題を捲き起した奇異な人物だったが、色情狂や詐欺師の同列に置くような人間でないことは、種々な事情によって今はもう明らかになっている。

当時の計算好きな男の報告によれば、一七九二年の四月五日にはじめて活動を開始した断頭台が最もよく稼いだ日には、四十五分間に六十二個の首を転がしたということである。フランス革命には、弑逆、屠殺、反噬、裏切、暗殺、欺騙、賄賂、恐喝、その他、人間のあらゆる卑怯な振舞いと残虐行為の最高の模範が示されているが、タンプルの古塔の中で行なわれた幼児虐待はその尤たるものであった。

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