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TORENDIA

幕末維新懐古談

本文約3,300字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

明治十年、日本で初めて開催される内国勧業博覧会に際し、当時の一般社会は未知の催しに困惑していた。高村光雲は、師である東雲から博覧会に出品する白衣観音の製作を託され、渾身の作として完成させる。出品作は最高位の竜紋賞を受賞し、世間の注目を集めるに至った。本書は、博覧会という新たな文明の波が広がる中で、当時の職人が直面した戸惑いや成功、そして時代の転換期における世相を回顧する一編である。

高村光雲

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🎧 幕末維新懐古談 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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堀田原から従前通り私は相更らず師匠の家へ通っている。すると、明治十年の四月に、我邦で初めての内国勧業博覧会が開催されることになるという。ところが、その博覧会というものが、まだ一般その頃の社会に何んのことかサッパリ様子が分らない。実にそれはおかしいほど分らんのである。今日ではまたおかしい位に知れ渡っているのであるが、当時はさらに何んのことか意味が分らん。それで政府の方からは掛かりの人たちが勧誘に出て、諸商店、工人などの家々へ行って、博覧会というものの趣意などを説き、また出品の順序手続きといったようなものを詳しく世話をして、分らんことは面倒を厭わず、説明もすれば勧誘もするという風に、なかなか世話を焼いて廻ったものであった。

当時、政府の当路の人たちは夙に海外の文明を視察して来ておって、博覧会などの智識も充分研究して来られたものであったが、それらは当局者のほんの少数の人たちだけで、一般人民の智識は、そういうことは一切知らない。その見聞智識の懸隔は官民の上では大層な差があって、今日ではちょっと想像のほかであるような次第のものであった。

右の通りの訳故、博覧会開催で、出品勧誘を受けても、どうも面倒臭いようで、困ったものだという有様でありました。ところが師匠東雲師も美術部の方へ何か出すようにという催促を受けました。師匠も博覧会がいかなるものであるか、一向分っておりません。それでどんなものを出して好いかというと、彫刻師の職掌のものなら、何んでもよろしい出してよい。従来製作しておるものと同じものでよろしいという。それではというので師匠は白衣観音を出品することにしたのでありますが、そこで師匠が私に向い、今度の博覧会で白衣観音を出すことにしたから、これは幸吉お前が引き受けてやってくれ、他の彫刻師たちもそれぞれ出品することであろうから、一生懸命にやってくれということでありました。

私はこうした晴れの場所へ出すものだということだからなかなか気が張ります。師匠の言葉もあることで、腕限りやるつもりで引き受けて、いよいよその製作に取り掛かったのであった。

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