嘉ッコは、小さなわらじをはいて、赤いげんこを二つ顔の前にそろえて、ふっふっと息をふきかけながら、土間から外へ飛び出しました。外はつめたくて明るくて、そしてしんとしています。
嘉ッコのお母さんは、大きなけらを着て、縄を肩にかけて、そのあとから出て来ました。
「母、昨夜、土ぁ、凍みだじゃぃ。」嘉ッコはしめった黒い地面を、ばたばた踏みながら云いました。
「うん、霜ぁ降ったのさ。今日は畑ぁ、土ぁぐじゃぐじゃづがべもや。」と嘉ッコのお母さんは、半分ひとりごとのように答えました。
嘉ッコのおばあさんが、やっぱりけらを着て、すっかり支度をして、家の中から出て来ました。
そして一寸手をかざして、明るい空を見まわしながらつぶやきました。
「爺※[#小書き平仮名ん、145-13]ごぁ、今朝も戻て来なぃがべが。家でぁこったに忙がしでば。」
「爺※[#小書き平仮名ん、145-14]ごぁ、今朝も戻て来なぃがべが。」嘉ッコがいきなり叫びました。
おばあさんはわらいました。
「うん。けづな爺※[#小書き平仮名ん、146-1]ごだもな。酔たぐれでばがり居で、一向仕事助けるもさないで。今日も町で飲んでらべぁな。うなは爺※[#小書き平仮名ん、146-2]ごに肖るやなぃじゃぃ。」
「ダゴダア、ダゴダア、ダゴダア。」嘉ッコはもう走って垣の出口の柳の木を見ていました。
それはツンツン、ツンツンと鳴いて、枝中はねあるく小さなみそさざいで一杯でした。
実に柳は、今はその細長い葉をすっかり落して、冷たい風にほんのすこしゆれ、そのてっぺんの青ぞらには、町のお祭りの晩の電気菓子のような白い雲が、静に翔けているのでした。
「ツツンツツン、チ、チ、ツン、ツン。」
みそさざいどもは、とんだりはねたり、柳の木のなかで、じつにおもしろそうにやっています。柳の木のなかというわけは、葉の落ちてカラッとなった柳の木の外側には、すっかりガラスが張ってあるような気がするのです。それですから、嘉ッコはますます大よろこびです。