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TORENDIA

梅のにおい

本文約910字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

梅の木にのぼった斑猫は、評判の梅の香りがつまらないと感じ、そこにやって来た鶯を捕らえて食べようと企てる。猫なで声で鶯に話しかけた斑は、梅の香りで踊りたくなったと嘘をつき、近づくよう誘う。しかし、斑の狙いを見抜いた鶯は誘いに乗らず、間一髪のところで飛び去る。猫と鶯のやり取りを通じて、食欲と警戒心の駆け引きを描く。

夢野久作

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🎧 梅のにおい / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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一匹の斑猫が人間の真似をして梅の木にのぼって花を嗅いでみました。あの枝からこの枝、花から蕾といくつもいくつも嗅いでみましたが、

「ナアーンダ、人間がいいにおいだ、いいにおいだと言うから本当にして嗅いでみたら、つまらないにおいじゃないか。馬鹿馬鹿しい、帰ろう帰ろう」

と樹から降りかかりました。

「ホーホケキョ、ホーホケキョ」

「オヤ、鶯がやって来たな。おれは一度あいつをたべてみたいと思っていたが、ちょうどいい。ここに隠れてまっていてやろう」

「ホーホケキョ、ホーホケキョ、ケキョ、ケキョ、ケキョ、ケキョ、ケキョ」

と言ううちに鶯は、斑のいる梅の木のすぐそばにある梅の花のたくさん開いたほそい枝の処へ、ヒョイととまりました。

「鶯さん鶯さん」

と猫なでごえで呼びかけました。

「オヤ斑さん、今日はいいお天気ですね」

「ニャーニャー、ホントにいいお天気ですね。それにこの梅の花のにおいのいいこと。ほんとにたべたくなるようですね」

「オホホホホ、イヤな斑さんだこと。梅の花においしいにおいがしますか」

「ええ、梅のにおいをかぐとおなかが急にすくようです。あなたはどんなにおいがするのですか」

「あたしはねえ、梅のにおいを嗅ぐと何とも言えないいい心持ちになって、歌がうたいたくなるのです。そうしてあちらこちらと躍りながら飛びまわりたくなるのです」

「ヘエ、さようですかね。そう言えばあたしも何だか踊りたくなったようです」

「まあ、おもしろいこと。一つおどってみせてちょうだいな」

「いいえ、あたしはあなたの着物のにおいを嗅いだら一緒に踊りたくなったのです、本当にあなたのにおいを嗅ぐといいこころもちになります。どうです、一緒に踊ろうじゃありませんか」

「いやですよ。あなたと踊るのはこわい」

「何故です。ちっとも怖い事はないじゃありませんか。もっとこっちへきてごらんなさい」

「イヤですよ。妾のにおいを嗅いで踊りたくなったと言うのは嘘でしょう」

「どうして」

「たべたくなったんでしょう」

と言ううちに鶯はパッと飛げ出しました。

「しまった」

と斑が飛びつきますと、ドタリと地べたへ落ちてしまいました。

「ホーホケキョ、ホーホケキョ」

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