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大庭悠吉 三十一
同 空子 二十三
女中かな 二十
児玉的外 五十六
同 初男 十
新聞配達 二十一
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五月末の日曜日昼近く
東京郊外のどんづまり
大庭悠吉の住居――新しい文化住宅
舞台正面は座敷の縁、二階から突き出た露台。庭を距てゝ狭い道路
右手、庭の一隅に物置、その前を通つて勝手口へ廻れるやうになつてゐる。
女中のかなが、座敷の掃除をしてゐる。御用聞きの声らしく「今日は」
かなは台所の方に向つて
かな 酒屋さんね、あゝ、今日はなんにもなかつたわ。 声 みんなお留守……? かな えゝ。旦那さんは昨日からずつとだし、奥さんも、昨夜遅くお出掛けさ。 声 何処へ行つたんだい、奥さんは? かな お里よ。ほら、神田なのよ、お里は、……。近頃、旦那さんとは、ろくに口も利かないのよ。昨夜も、また、旦那さんが帰つて来ないもんだから、たうとう、業を煮やして、「あたしや、陸坊を連れて里へ帰るからね、もしお帰りになつたら、さう申上げといておくれ」つて、あんた、十一時よ、もう……。それがさ、出掛けに、またかういふのよ。「万一、今夜お帰りにならなかつたら、あたし覚悟があるからね。いづれ、明日のお昼頃、様子を見に帰るけど、旦那さまには、お前からなんにもいふ必要はない。たゞ、朝でもお帰りになつて、あたしはつてお訊きになつたら、今朝出掛けたつていつておくれ。いざつていふ場合、こつちに弱味がないやうにしとくんだから……。わかつたかい。間違ふと承知しないよ」――かうなのよ。あたし、面喰つちやつたわ。旦那さんが帰つて来るまでに、奥さんが帰つてくれゝばいゝつて、さう思つてるとこよ。だつて、あたしが、嘘をついてさ、あとで、二人が仲直りをして御覧よ。こつちや、旦那さんに体裁が悪いぢやないの……。
この時、玄関の戸があく。かなは、急に口を噤み、台所へ目くばせをして玄関に出る。
主人、大庭悠吾が、折鞄を提げてはひつて来る。かながその後に続く。