音の世界
本文約8,200字 ・ 読了時間 約17分
あらすじ(AIが作成しました)
ホテルのサロンに滞在する楠見夫婦と、別室に泊まる男、そして商店の電話室が交錯する。妻はかつての学友である男と電話で密会を重ね、夫の寛大さや自身の信じる心について心理的な揺さぶりをかける。虚実の入り混じる会話と電話越しの芝居が続く中、男女の関係性と互いへの隠し事を巡る奇妙な対峙が、深夜のホテルで繰り広げられる人間模様を描く劇作品。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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女
男甲
男乙
其の他
[#改ページ]
舞台は、連絡なき三つの場所を同時に示し得るやう、その空間を利用して、それぞれ独立した装置を施す。
三つの情景は、大体次の如き関係に配置されてゐればよい。
Aは、ホテルのアパルトマンに属する贅沢なサロン。
Bは、別のホテルの一人用寝台附小室。
Cは、ある商店の電話室。
[#A、B、Cの図省略]
[#改ページ]
時刻は午後九時。
Aの部屋では、男甲がソフアに倚つて夕刊を読んでゐる。その妻らしき女が、隣室から出て来る。
女 ちよつと、大きい方のトランクを開けて頂戴な。 男甲 もう寝るんだから、明日にしたらどうだ。 女 今、いるもんがあるのよ。 男甲 なにがいるんだ。 女 いゝから開けて頂戴つたら……。
男甲、渋々起つて隣室にはひる。女、その後に続く。
この時、Bの部屋へ、男乙が、外から帰つて来る。帽子を被つたまゝ寝台の上に寝ころがる。が、すぐにまた起き上り、電話の受話器を外す。
男乙 もし、もし、都ホテルへ繋いでくれ給へ。あゝ、都ホテル……。もし、もし、そちら、都ホテルですか。楠見つていふ人ゐますね。えゝ、さうです、夫婦連れの……。今、ゐますね。僕の名前は云はなくつてもよろしい。すぐ繋いで下さい……。
Aの部屋の電話が鳴る。女が電話口に現れる。
女 もし、もし……えゝ、さうです。はい、どうぞ……。 男乙 ありがたう。あ、もし、もし……。 女 どなた様でいらつしやいますか。 男乙 今晩は……。僕だよ。 女 あゝ、さう……(ちよつと隣室の方に眼をやり)今、何処から……? 男乙 ステーシヨン・ホテルだ。さつきは失敬……。悪いと思つて黙つてたんだよ。そこにゐるの、大将……。 女 えゝ、ゐるわ。 男乙 僕の声聞えやしない? 女 さうね、あぶないわ。あなたも、旦那様と御一緒なの。まあ、ちつとも知らなかつたわ。お遊びにいらつしやいな。 男乙 どうだい、結果は……。あんまり新婚旅行らしくないぜ。 女 どうして……。
男甲、隣室より現れ、再びソフアに腰をおろす。夕刊を読み続ける。時々、上眼使ひに女の方を見る。