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TORENDIA

愛國歌小觀

本文約5,300字 ・ 読了時間 約11分

あらすじ(AIが作成しました)

大東亜戦争勃発以降、国民の間で愛国歌の朗誦が広まる中、著者が十人あまりの歌人による愛国歌を抽出し、その背景や思想を論じる。賀茂真淵や本居宣長ら国学者の歌をはじめ、幕末の志士や歌人が詠んだ歌を通じ、古調の味わいや各時代における皇国思想の変遷、さらには神風や大君の盾といった言葉に込められた国民の気概や忠誠心について、作歌の意図や歌調の特徴を交えて解説する。

齋藤茂吉

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🎧 愛國歌小觀 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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今日は愛國歌について一言を徴せられたが、大東亞戰爭の勃發して以來、國民が奮つて愛國歌を讀み、朗誦し、萬葉集に載つた、『海ゆかば水漬く屍山ゆかば草むす屍大皇の邊にこそ死なめ顧みは爲じ』や、『けふよりは顧みなくて大君の醜の御楯といでたつわれは』の如きは、全く人口に膾炙せられるに至つた。また、私の先輩友人等から、雜誌により、著書により、ラジオ放送によつて、愛國歌がつぎつぎに發表せられたから、私が今日愛國歌について答へるとしても、自然重複してしまふのではあるまいかとおもつたが、併し縱しんば重複してしまつても、或は幾たび同じ歌が吟誦せられるにしても、あへて餘計だといふわけ合のものではあるまいから、左に、十人あまりの人によつて作られた愛國歌を抽出して置かうとおもつたのである。

○

うらうらとのどけき春の心よりにほひいでたる山ざくら花 (賀茂眞淵)

しきしまの大和心を人とはば朝日ににほふ山ざくら花 (本居宣長)

これはおなじく、皇國の心の象徴ともいふべき櫻を讚美した歌であるが、眞淵の歌の方は、自然に無理なく出來てゐて、特に、『やまと心』といふやうなことを露はには云つてゐない。おなじく眞淵の歌に、『もろこしの人に見せばやみよし野のよし野の山の山ざくら花』といふのがあるが、この方には幾分、『やまと心』といふことを表面に出して居る。宣長の歌は、既に有名な歌で、大衆化すべき要約を具備して通俗的である。さうしてこの程度の通俗性は宣長の意圖としては、是非必要であつたこととおもふ。

宣長には、玉矛百首のごとき愛國吟があつて、その中に、『かしこきやすめら御國はうまし國うら安の國くにのまほくに』『百八十と國はあれども日の本のこれの倭にます國はあらず』『天地のそきへのきはみ覓ぎぬとも御國にましてよき國あらめや』等の歌がある。これ等の百首と餘り歌まで合せて、殆ど全部が古語を縱横に使つた、いはゆる古調の歌であるから、『朝日ににほふ山ざくら花』の歌のやうに分かりよくない。これもまた宣長自身さう意識して作つて居るのである。

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