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TORENDIA

春と修羅 第二集

本文約43,400字 ・ 読了時間 約87分

あらすじ(AIが作成しました)

岩手県花巻の農学校で教師を務めた四年のうち、後半二年の手記をまとめた詩集。自然の風景や日常の情景、農村の生活を鋭い感性で切り取る。自身の孤独や葛藤、教え子への厳しくも温かい眼差し、また土地の歴史や自然現象を独自の視点から描く。季節の移ろいとともに変化する心象や、過酷な現実の中で直面する苦悩と祈りを、瑞々しくも静謐な言葉で紡ぎ出し、詩人の内面世界と東北の風土を克明に映し出す作品集である。

宮沢賢治

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序

この一巻は

わたくしが岩手県花巻の

農学校につとめて居りました四年のうちの

終りの二年の手記から集めたものでございます

この四ヶ年はわたくしにとって

じつに愉快な明るいものでありました

先輩たち無意識なサラリーマンスユニオンが

近代文明の勃興以来

或いは多少ペテンもあったではありませうが

とにかく巨きな効果を示し

絶えざる努力と結束で

獲得しましたその結果

わたくしは毎日わづか二時間乃至四時間のあかるい授業と

二時間ぐらゐの軽い実習をもって

わたくしにとっては相当の量の俸給を保証されて居りまして

近距離の汽車にも自由に乗れ

ゴム靴や荒い縞のシャツなども可成に自由に撰択し

すきな子供らにはごちそうもやれる

さういふ安固な待遇を得て居りました

しかしながらそのうちに

わたくしはだんだんそれになれて

みんながもってゐる着物の枚数や

毎食とれる蛋白質の量などを多少夥剰に計算したかの嫌ひがあります

そこでたゞいまこのぼろぼろに戻って見れば

いさゝか湯漬けのオペラ役者の気もしまするが

またなかなかになつかしいので

まづは友人藤原嘉藤治

菊池武雄などの勧めるまゝに

この一巻をもいちどみなさまのお目通りまで捧げます

たしかに捧げはしまするが

今度もたぶんこの出版のお方は

多分のご損をなさるだらうと思ひます

そこでまことにぶしつけながら

わたくしの敬愛するパトロン諸氏は

手紙や雑誌をお送りくだされたり

何かにいろいろお書きくださることは

気取ったやうではございますが

何とか願ひ下げいたしたいと存じます

わたくしはどこまでも孤独を愛し

熱く湿った感情を嫌ひますので

もし万一にもわたくしにもっと仕事をご期待なさるお方は

同人になれと云ったり

原稿のさいそくや集金郵便をお差し向けになったり

わたくしを苦しませぬやうおねがひしたいと存じます

けだしわたくしはいかにもけちなものではありますが

自分の畑も耕せば

冬はあちこちに南京ぶくろをぶらさげた水稲肥料の設計事務所も出して居りまして

おれたちは大いにやらう約束しようなどといふことよりは

も少し下等な仕事で頭がいっぱいなのでございますから

さう申したとて別に何でもありませぬ

北上川が一ぺん氾濫しますると

百万疋の鼠が死ぬのでございますが

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