『注文の多い料理店』新刊案内
本文約1,600字 ・ 読了時間 約4分
あらすじ(AIが作成しました)
イーハトヴと呼ばれる岩手県を舞台とした九編の童話集を収める。猟の途中で道に迷った二人の青年紳士が、奇妙な注文が書き記された料理店に立ち寄る表題作や、山猫からの葉書を受け取った子供が山へ向かう物語、自然の神秘や子供の心象風景を描く。著者が心象の中に実在させたドリームランドでの不思議な出来事や、少年少女期から青年期への心理的な芽生え、都会文明に対する反感などをつづる、新鮮な田園の産物である。
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イーハトヴは一つの地名である。しいて、その地点を求むるならば、それは、大小クラウスたちの耕していた、野原や、少女アリスがたどった鏡の国と同じ世界の中、テパーンタール砂漠のはるかな北東、イヴン王国の遠い東と考えられる。
じつにこれは著者の心象中に、このような状景をもって実在したドリームランドとしての日本岩手県である。
そこでは、あらゆることが可能である。人は一瞬にして氷雲の上に飛躍し大循環の風を従えて北に旅することもあれば、赤い花杯の下を行く蟻と語ることもできる。
罪や、かなしみでさえそこでは聖くきれいにかがやいている。
深い椈の森や、風や影、肉之草や、不思議な都会、ベーリング市まで続く電柱の列、それはまことにあやしくも楽しい国土である。この童話集の一列は実に作者の心象スケッチの一部である。それは少年少女期の終りごろから、アドレッセンス中葉に対する一つの文学としての形式をとっている。
この見地からその特色を数えるならば次の諸点に帰する。
一 これは正しいものの種子を有し、その美しい発芽を待つものである。しかもけっして既成の疲れた宗教や、道徳の残滓を、色あせた仮面によって純真な心意の所有者たちに欺き与えんとするものではない。 二 これらは新しい、よりよい世界の構成材料を提供しようとはする。けれどもそれは全く、作者に未知な絶えざる驚異に値する世界自身の発展であって、けっして畸形に捏ねあげられた煤色のユートピアではない。 三 これらはけっして偽でも仮空でも窃盗でもない。 多少の再度の内省と分析とはあっても、たしかにこのとおりその時心象の中に現われたものである。ゆえにそれは、どんなに馬鹿げていても、難解でも必ず心の深部において万人の共通である。卑怯な成人たちに畢竟不可解なだけである。