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TORENDIA

詩ノート

本文約24,000字 ・ 読了時間 約49分

あらすじ(AIが作成しました)

病床や農作業、汽車での移動といった日常の情景を鮮烈な色彩と冷徹な分析眼で捉え、北上山地や雪野原を舞台に展開される思索を綴る詩集。著者は科学的な知識と鋭い感性を融合させ、自然現象や労働のなかに新たな時代の予兆を見出す。また、生徒に向けたメッセージでは、既存の価値観を打ち破り、新たな時代を切り拓く力と責任を持つべきだと説き、希望と決意を込めて透明で爽やかな未来の到来を希求する。

宮沢賢治

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七四四  病院 一九二六、一一、四、

途中の空気はつめたく明るい水でした

熱があると魚のやうに活溌で

そして大へん新鮮ですな

終りの一つのカクタスがまばゆく燃えて居りました

市街も橋もじつに光って明瞭で

逢ふ人はみなアイスランドへ移住した

蜂雀といふ風の衣裳をつけて居りました

あんな正確な輪廓は顕微鏡分析の晶形にも

恐らくなからうかと思ふのであります

[#改ページ]

七四五  〔霜と聖さで畑の砂はいっぱいだ〕 一九二六、一一、一五、

霜と聖さで畑の砂はいっぱいだ

影を落す影を落す

エンタシスある氷の柱

そしてその向ふの滑らかな水は

おれの病気の間の幾つもの夜と昼とを

よくもあんなに光ってながれつゞけてゐたものだ

砂つちと光の雨

けれどもおれはまだこの畑地に到着してから

一つの音をも聞いてゐない

[#改ページ]

一〇〇一  汽車 一九二七、二、一二、

プラットフォームは眩ゆくさむく

緑いろした電燈の笠

きららかに飛ぶ氷華の列を

ひとは偏狭に老いようし

汽車近づけば

その窓が Ice-fern で飾られもしよう

車のなかはちひさな塵の懸垂と

そのうつくしいティンダル現象

日照はいましづかな冬で

でんしんばしらや建物や鳩

かゞやいて立つ氷の樹

青々けぶる山と雲

髪をみだし

黒いネクタイをつけて

朝の汽車にねむる写真師

……これが小さくてよき梨を産するあの町であるか……

……はい閣下 今日は多量の氷華を産して居りまする……

……それらの樹群はみなよき梨の母体であるか……

……はい閣下 あれは夏にはニッケル鋼の鏡をつるす

はんの木立でございます……

……この町の訓練の成績はどうぢゃ……

……はい閣下 寒冷ながら

水は風より より濃いものと存じます……

けむりは凍えていくつにもちぎれて

松の林に落ちこむし

アカシヤの木の乱立と

女のそのうつくしいプロファイル

もう幾百 目もあやに

風や磁気に交叉する電線と〔以下空白〕

[#改ページ]

一〇〇二  〔氷のかけらが〕 一九二七、二、一八、

氷のかけらが

海のプランクトンのやうに

ぴちぴちはねる朝日のなかを

黒いペンキのまだ乾かない

電車が一つしづかに過ぎる

兵隊みたいな赤すぢいりの帽子をかぶった電気工夫や

またつゝましくかゞやいてゐる朝の唇

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