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TORENDIA

天衣無縫

本文約13,000字 ・ 読了時間 約26分

あらすじ(AIが作成しました)

見合いの席に遅刻し、酒に酔った姿で現れた頼りない男性と結婚した女性は、夫のあまりの世間知らずや気の弱さに翻弄される。夫は同僚に金を貸して見合いの勘定を払えなくなったり、自分の給与昇給を左右するタイムカードの打刻を忘れたりするなど、失敗を繰り返す。妻は夫を激しく叱咤するが、何事にも無頓着で、帰宅するや否や眠り込んでしまう夫の不可解なまでの無邪気さと、それに対する拭いがたい親愛の情との間で揺れ動きながら生活を送る。

織田作之助

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みんなは私が鼻の上に汗をためて、息を弾ませて、小鳥みたいにちょんちょんとして、つまりいそいそとして、見合いに出掛けたといって嗤ったけれど、そんなことはない。いそいそなんぞ私はしやしなかった。といって、そんな時私たちの年頃の娘がわざとらしく口にする「いやでいやでたまらなかった」――それは嘘だ。恥かしいことだけど、どういう訳かその年になるまでついぞ縁談がなかったのだもの、まるでおろおろ小躍りしているはたの人たちほどではなかったにしても、矢張り二十四の年並みに少しは灯のつく想いに心が温まったのは事実だ。けれど、いそいそだなんて、そんなことはなかった。なんという事を言う人達だろう。

想っただけでもいやな言葉だけど、華やかな結婚、そんなものを夢みているわけではなかった。貴公子や騎士の出現、ここにこうして書くだけでもぞっとする。けれど、私だって世間並みに一人の娘、矢張り何かが訪れて来そうな、思いも掛けぬことが起りそうな、そんな憧れ、といって悪ければ、期待はもっていた。だから、いきなり殺風景な写真を見せつけられ、うむを言わさず、見合いに行けと言われて、はいと承知して、いいえ、承知させられて、――そして私がいそいそと――、あんまりだ。殺風景ななどと、男の人の使うような言葉をもちいたが、全くその写真を見たときの私の気持はそれより外に現わせない。それとも、いっそ惨めと言おうか。それを考えてくれたら、鼻の上に汗をためて――そんな陰口は利けなかった筈だ。

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