「みの」の死
本文約5,200字 ・ 読了時間 約11分
あらすじ(AIが作成しました)
自動車に轢かれ瀕死の状態となった愛犬の美濃と、その最期を看取る飼い主の心情を描く。美濃は腰骨を折る重傷を負いながらも、静かに主人の傍らで落着いた態度を見せる。獣医の診断により回復の見込みがないことを悟りつつも、主人は美濃との思い出を胸に、別れの時までその姿を見守り続ける。弟であり無二の親友でもあった美濃の一徹で烈しい気性を回想し、その誇り高い生き様を英雄の生涯になぞらえて、静かな追悼の祈りを捧げる。
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気狂ひの様になつて帰つて来たゑみやから、「みのが轢かれた」ときいて、私が飛び出して行つたとき、みのは黄バスのガレーヂの傍に倒れて、かなしい遠吠えをしてゐた。
「みの! みの!」私は人前もかまはず、さう呼んで、冷いコンクリートに膝を突いてしまつた。
「みの! どうしたの/\」
美濃は私の声をきくと遠吠えをやめて、チラと私を見上げ、眼を細くして満足の表情を示したが、もう尻尾はふれなかつた。
見ると腰を轢かれたらしく、後足が少し裂けて、白いものが出てゐた。――その時は分らなかつたが、白いのは折れた腰骨の端であつた。
しかし、そのわりに血は出ず、ただ傷口と口腔から、血を出してゐたが、あまりみぐるしい程ではない。私が来てからは吠えるのもやめて、只ガツクリとそばの板に頭をもたせかけ、丁度、枕をする様な恰好でじつとしてゐる。只呼吸だけは苦しさうに、体中でハツ、ハツとついてゐる。周りは一杯の人だかり。
「まあ、可哀想に。苦しさうですわ。水をのませておやりなさいな」と一人の小母さんが云つた。かういふ重傷のとき、水をのませると直ぐ死ぬといふことを、私はきいた様に思つてゐたから、その気持だけを受けて、
「はあ、さうしませう」と答へた。
みののことで世話になつたお巡りさんが、
「さあ/\見世物ぢやないんだ」と皆を追ひ払つてくれたのはうれしかつた。
私は……さう、私はたしかに案外平静だつた。涙なんか一つも出なかつた。極度の緊張に涙が凍つて出なかつたのかもしれない。時々「みの! みの!」と呼びながら、只静かに皆の来るのを待つた。
おばあ様のお骨折で、正源寺の小父さんがリヤカーを引つぱつて来てくれた。
私は、リヤカーにのせる時さわつたら、みのはこの傷をうけたんだから、気が立つてかみつきやしないかと心配したが、私が抱き上げても声一つたてずじつとしてゐた。平素怒りつぽくて、気の強いみのには似合はず、落着いて分別しきつた態度だつた。
おばあ様と、節ちやんと私とはリヤカーにつきそふて家へ向つた。
ガタ/\する砂利道では、傷に響くのを恐れて、二人で持ち上げてやつたりした。