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TORENDIA

小説

本文約1,000字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

小説を読み慣れない語り手が、勧められた森鴎外の作品やその他の小説を読んで抱く、困惑や嫌悪感、そして特有の心理的な葛藤を綴る。読み進めるうちに覚える「嫌な気持ち」や、物語に浸食される感覚に戸惑う一方、童話や歴史、地理に関する本への愛着を明かす。小説という存在に対し、好奇心を持ちつつも拒絶反応を示してしまう自己の複雑な読書体験と、本との距離感に揺れ動く内面を描く。

平山千代子

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🎧 小説 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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私つて、まあ、一体どういふんだらう。

本がよみたいけど、何か本をかして下さらない? ツて言つたので、お母様が明治大正文学全集の森鴎外をかして下さつた。

文章がきれいだから、ワケなんか考へずに、大ザツパによんでごらんなさいとおつしやる。

仰せかしこみて棒ヨミにずら/\とやつてみた。だけどワケがわかんないのだから、一寸も面白うない。ア――小説ツて何てつまんないもんだろ。

そこで、ほかのワケのわかる様なのをよんだ。

ワケはわかつたが、今度は胸がわるくなつた。思はず四、五回つゞけてついた溜息と共に、追ひ出さうとしたが、まだあまりいゝ気持になれなかつた。

どうも性にあはないらしい。

私は小説なるものをあまり読んだことがない。たまによんでも、途中で例によつてフーツと吐き出してしまふ。どうして人はこんなのが面白いのかと思ふ。ナゼつて、つまんないじやないの。第一よんで気持がいゝのかしら。私なんかよんでも一寸も気持よくなんかならないどころか、後が「イヤーあな」気持になつてしまふ。

節ちやんはこれを評して「本によまれちやふのね」といつた。さうかもしれない。そこへ行くと童話はいゝよ。よんだつて、いくらよんだつて、いやな気持にはならない。お伽話もいゝな。よんだあとがとてもいゝ気持だもの。

だけど私だつて赤んぼぢやないから、そんなのばつかしよんでるんじやないのよ。私の好きな本をあげれば、第一に「君たち」それから「人類の進歩」。「日本世界名作選」の中の二、三をのぞいて「小公子」。「善太と三平」。「トルストイ童話集」。よまないけど『愛の一家』の類。それから――あとは、歴史や地理に関したもの、それ位。「これからの青年」なんかもとつても好きだつた。「青い鳥」。「フランダースの犬」も。

一体、私にはどんなのがいゝのかしら。自分でもわかんなくなつちやつた。けれど、私は正直のところ、小説が毛虫の様にきらひなのじやない、決して。さうかと云つても好きなのではない。要するに物好きなのだらうと思ふ。のぞいてみたい気もする。そして、公然と許されてゐる本でも内しよで悪いことをするみたいにビクビクしながらよんでみる。

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