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TORENDIA

お泊り

本文約2,900字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

女学校一年の夏、名古屋から親戚の住む神戸へ招かれた少女は、慣れない環境での寂しさや連日の嵐、激しい雷に悩まされる。叔母に連れられ訪れた宝塚で、家庭の教育方針と自身の好奇心の間で葛藤しながら歌劇を観賞することになる。帰宅後、親の真意を知った少女が、自身の幼く生意気な振る舞いを振り返り、当時の厚意を素直に受け入れられなかった後悔と恥じらいの心情を綴る。

平山千代子

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🎧 お泊り / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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名古屋へ行つた年の夏だから、女学校一年の夏である。

東京へいらしつたお帰りに、すみ子叔母様が名古屋へお立寄りになつた。

そしてお帰りに「千代ちやん一しよに行かない?」とおつしやつた。

「帰りは芳子と一しよに帰ればいゝから……」と云つて下さつたし、神戸のお家でいつかピアノを弾かして頂いたことを思ひ出し、何の気なしに「行く」と云つてしまつた。

ほんの一時の出来心ではあつたが、ピアノがひける嬉しさに私は喜んで汽車に乗つた。名古屋から神戸までである。直に着いてしまつた。

しかし途中は、その少し前にあつた風水害で土がうづ高くつまれてをり、また水びたしの所などもあつて、少し私に里心をおこさせた。お迎への伯父様や、芳子ちやん、信ちやん、康ちやんと神戸のお家についたのは、もう夕方に近かつた。

着いて荷物もおちつけて、坐つてみると又なんとさみしいのであらう。

叔母様と芳子ちやんはお台所、叔父様は新聞をよんでいらつしやる。信ちやん康ちやんもそれ/″\何かしていらした。私は一人ポツンと坐つて何かおちつかない気持でゐた。夕方の臭ひがして来る。私は家の皆のことを思ひ出してゐた。

「今頃みんな何してゐるだらう……夕食の用意してるのかなあ、お父様はお帰りになつただらうか」

それからそれへと考へ始めると、私はもうたまらなくなつた。無性に帰りたくなつた。

私はほんとにたまらなく淋しく、不覚にも涙さへ出てくるのだつた。とび出しても帰りたかつた。

その中にお夕飯が始まつた。御馳走もちつとも美味しいとは思はなかつた。皆さんはほんたうに朗らかで、いろ/\と私のことも気をつかつて下さり、客としてこんな居心地のいゝおもてなしは中々ないほどの厚遇をうけながら、やつぱり私はほんたうに皆さんと一つになり切らなかつた。叔父様叔母様の朗らかな、やさしいお態度、芳子ちやんや信ちやん方のしたしい、仲のよい御様子をみるにつけても、なにかこの場にそぐはない、自分だけ違ふ者の様な気がしてならなかつた。

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