TRENDIA CLASSIC

童話と教育について

萩原朔太郎

1 / 8

近頃の子供たちの悦ぶ童話は、昔とすつかりちがつたといふ説がある。今の時代の子供たちは、もはや昔の子供のやうに、フアンタスチツクで荒唐無稽のお伽話――森の妖精の話や、魔法使の話や、赤頭巾の話や、鉛の兵隊の話や、親指太郎の話や、ピノチヨの話や、惡魔が人間に化けた話や――などを悦ばないといふのである。ずつと幼い幼兒は別として、少し歳を取つた今の子供は、その種のお伽話に沒興味であり、彼等の悦ぶものは、もつと現實的で事實に即し、もつと科學的合理性のある童話だといふのである。これを語つた人は、今の子供の知性的進歩を示す證左として、教育上の悦ばしい現象として話をした。だがもし果してさうだとすれば、反對にこれは憂ふべき現象であり、教育上の由々しき大問題であると思ふ。

萩原朔太郎の他の作品