九月廿一日
庵居第一日(昨日から今日へかけて)。
朝夕、山村の閑静満喫。
虫、虫、月、月、柿、柿、曼珠沙華、々々々々。
・移つてきてお彼岸花の花ざかり
□
・蠅も移つてきてゐる
近隣の井本老人来庵、四方山話一時間あまり、ついで神保夫妻来庵、子供を連れて(此家此地の持主)。
――矢足の矢は八が真 大タブ樹 大垂松 松月庵跡――
樹明兄も来庵、藁灰をこしらへて下さつた、胡瓜を持つてきて下さつた(この胡瓜は何ともいへないうまさだつた、私は単に胡瓜のうまさといふよりも、草の実のほんとうのうまさに触れたやうな気がした)。
酒なしではすまないので、ちよんびりシヨウチユウを買ふ、同時にハガキを買ふことも忘れなかつた。
今夜もよう寝た、三時半には起床したけれど。
・さみしい食卓の辛子からいこと
・柿が落ちるまた落ちるしづかにも
九月廿二日
秋雨しめやかである、おちつかせる雨である。
其中一人とおさまつてゐると、身心が自然になごんでくる。
駅の売声がようきこえる。
跣足でポストまで、帰途、蓼を折つてきて活ける、野趣横溢、そして秋気床間に満つ。
百舌鳥が啼く、だいぶ鋭くなつた、秋の深さと百舌鳥の声の鋭さとは正比例する、いや、秋が深うなれば百舌鳥は鋭く啼かざるを得ないのだ。
改作二句
・伸びて伸びきつて草の露
・柿は落ちたまゝ落ちるまゝにしてをく
『後記』昨日の誤写を補足して置かう、――いはゞ引越祝をやつた記事の追加だ。――
今夜はどうしても飲まなければならないのだつた、引越祝と軽視すべきぢやない、結庵入庵の記念祝宴なのだ、しかも私は例によつて文なしだ、恥を忍んで、といふよりも鉄面皮になつて、樹明兄から五十銭銀貨三枚を借りる(返さなければ掠奪だ!)、街へ出て、鮹、蒲鉾、酒、煙草、葉書を買うて来る、二人でやつてゐるうちに、冬村君もやつてきて、三人で大に愉快にやつた、めでたしめでたし、万歳万歳。――
・身にちかくあまりにちかくつくつくぼうし
昼虫のしづけさを雨が落ちだした