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TORENDIA

死の航海

本文約8,500字 ・ 読了時間 約18分

あらすじ(AIが作成しました)

阿弗利加のポートサイド港で老いた水夫が、ある巨大商船の船長となる確信を抱いて世界中の港を渡り歩いている。宿で出会った若い水夫ガブリエルにその夢を語るが、信じてもらえない。やがて印度洋を航海中の船で嵐に遭遇したガブリエルたちの前に、船首に黄金の鷲を飾った古風な商船が現れる。そこには船長服を纏ったあの老人の姿があり、船員として骸骨たちが働いていた。幽霊船は衝突する直前で幻のように消え去る。

国枝史郎

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一

昨日のように今日も矢っ張り太陽は西に沈んで行く。

夕陽に照らされた地中海は猩々緋のように美しい。船々の甲板、船々の船檣、そして船々の煙突は焔のように輝いている。

阿弗利加の南端。ポートサイド港。季節は夏の真中であった……。

港には人々が出盛っていた。ニスのような皮膚をしたヌビヤ人、ターバンを巻いた亜剌比亜人。袍を纏った波斯人。そうして皆喋舌っていた。多くは大道商人である。

「沙漠から掘り出した金剛石! 大負けに負けて七十銭じゃ! どうじゃなどうじゃな、いらんかな!」

「波斯絹布を買わんかな! 大幅一丈が二円とはどうだ! 安売安売、大安売じゃ!」

「アビシニアで捕らえた甲虫! 宝石のように美しい! 一匹五厘じゃ! 買ったり買ったり」

「薄荷を買わんかなスダンの薄荷を! 肉桂を買わんかなメッカの肉桂を!」

彼等は大方裸体である。そうして大方洗足である。

盛装を凝らした貴婦人を連れた欧羅巴人も歩いている。官吏。旅行者。会社員。運河開鑿の技師なども……。

葉巻をふかしながら一人の紳士が伴れの貴婦人に話しかける。

「……何んというガサツの町でしょう。ポートサイドというこの町は」

「諸国の人種の集まっている様子は、恰度人間の博覧会ですわね」

旅行者の一人は心の中で嬉しそうに独言を呟いた。

「なんて素的な町だろう。阿弗利加趣味と西欧趣味とが斯う旨く調和しているなんて、なんて素的な町だろう!」

陽が傾くに従って人々はいよいよ出盛った。今日の仕事の結終を急いでつけようとするのでもあろうか無数に並んでいる工場からは、鉄槌の音や機重器の音や汽缶の音がさも忙しく追い立てるように聞えて来る。海に突き出た船渠からは喘息患者の咳のような排水の音が聞えて来る。乗客を満載した電車の列は市の端れから駛って来ては桟橋の此方で車を停め、そこで乗客を呑吐して又市の方へ駛って行く。其都度港の海岸通へは多数の人々が電車から卸され小路小路へ散って行く。

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