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TORENDIA

橘曙覧評伝

本文約64,100字 ・ 読了時間 約129分

あらすじ(AIが作成しました)

越前福井の志濃夫廼舎で五十七歳の生涯を閉じた橘曙覧の晩年の姿と、その評伝を執筆する著者の苦心を描く。激動する明治維新の渦中、市井の隠士として病床で短歌を詠み続けた詩人の実像に迫る。あわせて、万葉集の影響を受けつつ独自の境地を開拓した曙覧の歌の歴史的変遷や、没後の資料不足に悩む著者の執筆過程を論じる。本書は、歌人の人間性と文学的価値を多角的に検証し、その作風を後世の読者に再提示する試みである。

折口信夫

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一 晩年の作物

天皇[#「天皇」の左に「オホキミ(?)」のルビ]は 神にしますぞ。天皇の勅としいはゞ、畏みまつれ

天の下清くはらひて、上古の御まつりごとに復る よろこべ

橘ノ曙覧が、越前福井三橋の志濃夫廼舎で、五十七年の生涯を終へたのは、慶応四年八月二十八日であつた。

「此日、早旦自ら起たざるを知り、一二、後事を遺命し、且つ、如キレ斯クノ古来未曾有の大御代に遭ひながら、眼前、復古の盛儀大典を見奉るに至らず、況や、かねての抱負も、将に達するに向はむとして、今日はかなく世を去るこそ、返す/″\も口惜しけれとて、切歯瞑目せられたり。聞く人、其志のほどを悲しまざる者なかりき」と、臨終の様を追懐したのは、彼の長男井出今滋である。(明治卅六年作、橘曙覧小伝)

この英雄風な最期の記述せられてゐる日は、京都では、既に東京行幸の為の訓諭が出るまでに、新代の光りが照りわたつてゐた。

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