TRENDIA CLASSIC
黒川能・観点の
置き所
折口信夫
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山形県には、秋田県へかけて、室町時代の芸能に関した民俗芸術が多く残つて居ります。黒川能は、その中でも著しいものゝ一つで、これと鳥海山の下のひやま舞ひとの二つは、特に皆様に見て頂きたいものであります。この黒川能が二十数年ぶりで上つて来るのであります。世話をして下さつた斎藤氏に感謝しなければならないと思ひます。
特殊の舞台構造
特にこの能で注意しなければならないのは、舞台構造であります。京都の壬生念仏を思はせるやうな舞台で、上下の廊下が橋掛りになつて居り、舞台の正面には春日神社の神殿を控へて居るのであります。即、舞台と神殿との間には屋根がかけられて、全体が内陣のやうな形をもつてゐます。以前は神殿だけが独立して居つたのですが、現今は、全体として完全な室内舞台の形式になつて居ります。奉仕する役者はといふと、上座と下座が二部落に別れて居り、こゝで能をする時は、上座は左橋掛り(正面から見て)から出て舞ひ、下座は右橋掛りから出て舞ふことになつて居る。これは最大きな特徴で、今度の公演に幾分でも実現出来れば結構だと思ひます。この神前演奏の形は、春日の若宮祭りの第一日の式と同形式といつていゝと思ひます。しかも、黒川では常にその形式を繰り返してゐるわけで、見物人よりも神に対する法楽を主としてゐることがわかります。
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