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TORENDIA

科学的研究と探偵小説

本文約6,200字 ・ 読了時間 約13分

あらすじ(AIが作成しました)

探偵小説を愛読する著者が、科学的研究に不可欠な観察力と想像力を養う手段として、本作が果たす役割を論じる。物語や事件現場を科学的に分析する重要性を説き、論理的な思考を養うための題材として探偵小説を推奨する。また、将来的に科学的根拠に基づいた探偵学が確立されることを期待し、真に高級な芸術として探偵小説が発展することへの願いと、読者の論理的思考を促すための試みを提案する。

小酒井不木

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🎧 科学的研究と探偵小説 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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私は幼い時分から探偵小説が好きで、今でも相変わらず読みふけっている。いつ読んでも面白い。ポーや、ドイルや、ガボリオの探偵小説は常に自分の座右に置かれてある。何度繰り返し読んでも面白い。紐育に留学していた時分は週刊の探偵小説雑誌を買って、毎夜床に入ってから夜更けまで読んだ。

ある時ハドソン河を隔てたジャーセー市に殺人事件が起こった。犯人は久しい間検挙されなかった。するとある日の紐育タイムス紙の論説欄に、官憲の手ぬるさを罵った傍ら、ポーの探偵小説「マダム・ロージェの怪事件」が引用してあった。すなわち事件の性質が似ているからである。

この小説は、ポーが費府に新聞記者をしている時、紐育の下町で評判の美人が殺されてハドソン河に捨てられてあった事件を、当時の貧弱な新聞記事を基として、仏国巴里に起こった話として書きあげたものである。

この小説でポーはデュパンという名探偵をして立派に事件の真相を言い当てしめたので、きわめて有名なものである。タイムス紙は、今、ポーが生きていたらあんなに貧乏しないで、名探偵として、摩天閣の一部に立派な事務所を設けたに違いない、なぜ第二のポーが出ないだろうかと結論した。

私はハドソン河畔を散歩するたびに、死骸の浮いていたのはこの辺だったろうかなどといつもこのポーの小説を思い起こした。さらに英国に渡ってからは、例のシャーロック・ホームズの住んでいたというベーカー街などを散歩して、いい知れぬなつかしい想像にふけったものである。

一度などは小説中のホームズの住居なる二百十二番地B〔(正しくは二二一B)〕は果たしてあるだろうかと考えて、調べたらもちろん無かった。しかし作者のコナン・ドイルは、あるいは一時この辺に住んだのかもしれないと思ったりした。人間の楽しさは空想に生き得るところにあるとさえ私は考えている。

探偵小説を読んだおかげでどこへ行っても面白い。それこそスチーブンソンではないが、辻馬車を見ても一種のロマンスを見出だすようなこともある。倫敦塔や、セント・ポールス寺院を訪うたびにエーンズウォースの小説を思い出さずにはいられなかった。

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