TRENDIA CLASSIC

頭蓋骨の秘密

小酒井不木

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山中の骸骨

実験室の前の庭にある桐の若葉が、ようやく出そろった五月なかばのある朝。塚原俊夫君が「Pのおじさん」と呼ぶ警視庁の小田刑事は、珍しくも私服を着て、私たちの事務室兼実験室を訪ねられました。小田さんは東京に近い△△県の田舎の生まれだそうですが、その村の小田さんの親戚の家に一つの事件が発生したので、俊夫君にその解決を依頼すべく来られたのです。

今日からちょうど五日前、△△県××村の付近の山奥で、先年関東の大地震の際、山崩れのあったところを、二人の農夫が掘りかえしていると、一本の松の木の根元から、以外にも、十二三の少年の死体があらわれました。死んでからよほど日数がたっていると見えて、単衣に包まれた身体も、学校帽子をそばに置いた頭も、ほとんど骨ばかりで、どこの誰とも分かりませんでした。

二人の農夫はびっくりして、転ぶように走って、F町の警察署に事の次第を急報しましたので、警察署からは直ちに三人の警官が取り調べのため、現場に駆けつけました。

掘りだされた死体は紺絣が単衣の筒袖で、黒い兵児帯をまとい、頭の部分には手拭いが巻きついていて、それが後ろの方で結んでありました。頭のそばに落ちていた学校帽子の徽章は、まごう方なく××村の小学校のそれであって、懐にある蟇口の中はからっぽであり、下駄には「草野」という焼印が捺されてありました。

その山は××村からF町へ行く途中にありますが、死体の発見されたところは平素めったに人が行かぬところだそうです。でも、噂を聞いた村人は、われ先にと集まってきて、程なく死んだ少年は、村の相当の資産家なる草野ふさ方の長男草野富三であると分かりました。ことに母親が来て着物も下駄も何もかも富三のものだと申しましたので、顔はもとより分かりませんでしたが、もはや疑う余地はなくなりました。

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