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TORENDIA

ヴアン・ダインの作風

本文約2,400字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

S・S・ヴァン・ダインの探偵小説における作風と人気の理由を論じる。アメリカ探偵小説界において群を抜く存在である同作家の長編作品群を取り上げ、その緻密な物語構成、犯罪捜査の手法、および心理的分析の精巧さを解説する。犯罪に関係のない描写を一切排除し、物語全体を伏線として機能させる執筆術や、独自のスタイルを構築する手法を分析し、当時の通俗小説とは一線を画す芸術的な探偵小説の在り方を詳述する。

平林初之輔

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🎧 ヴアン・ダインの作風 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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一

S・S・ヴァン・ダインは、数年前彗星のようにアメリカに出現して、一挙に、数あるアメリカの探偵小説作家の中で、群を抜いて王座をしめた作家である。

『ベンスン殺人事件』『カナリア殺人事件』『グリーン殺人事件』『僧正殺人事件』その他に近作一つと都合五つの長編小説を著わし、他に若干の短編小説がある。

そのうちで前の三つは既に映画化され、ウィリヤム・パウエルの主演で、三つとも日本へ輸入された。三つともトーキーであったが、最初に来た「カナリア殺人事件」は日本にまだトーキーの設備のできない時分だったので、サイレントで興行されたと記憶している。

もともと探偵小説の映画化は、困難であると見えて、シャーロック・ホームズ物にしても、ルパン物にしても、かつて成功したためしがない。トーキーは、その点で、サイレント映画よりも多少の便利をもっている。けれどもヴァン・ダインの作品の映画化は、どれも大して成功とは思われなかった。それだのに、映画会社が、引きつづき彼の作品を三つまで映画化したということは、彼の人気がどれほど異常であるかを知るに足る。

二

探偵小説に限らず、一般の通俗小説においても、アメリカの小説は、イギリスやヨーロッパ大陸の小説に比べて、馬鹿げた筋や、剣撃的なテンポや、千編一律なハッピー・エンドにいつまでも低回していて、芸術的価値の乏しいものが多い。ことに探偵小説においてそうで、私も、一時探偵小説が好きで、だいぶ新刊雑誌のものなどを読み漁ったことがあったが、これはと思うような作品にはめったにぶつかったことがなかった。

こうした中にあって、S・S・ヴァン・ダインの作品は光っている。

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