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TORENDIA

愛読作家についての断片

本文約2,200字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

探偵小説を愛好する著者が、コナン・ドイルの博識と神秘性、ポーの理知的な作風、ルルーやルブランの機知に富んだ構成について論じる。さらに、落ち着いた筆致を持つドゥーゼ、変幻自在な物語を展開するランドンへの関心を語る。結びとして、感覚と想像力の異常性を持ち合わせた江戸川乱歩への評価を綴り、過去の自身の論考における誤りを訂正する。

平林初之輔

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私は、探偵小説は、手にはいるものは、見さかいなく、好きで読みますけれども、誰と言って、特別に好きな作家は、まずありません。

コナン・ドイルは、今でもそうとう面白く読めますが、いささか千遍一律なのが鼻につきます。数ヶ月前、本誌〔『新青年』〕の増大号にのった長編小説などは、どうも感心しませんでした。ことに、印度あたりから、超自然の力をもった僧侶をひっぱりだしてきて手品の種を明かすなどは、全くまたかという感じしか与えません。印度といえばコナン・ドイルの印度に関する知識はよほど深いようであるが、あまりに、それが神秘化されすぎていて、読者にアナクロニズムの幻覚を起こさせるきらいがあります。

フランスのある批評家(たしかフランスだと思ったがまちがっているかもしれない)が、コナン・ドイルの refugee という、フランスのユグノーのことを書いた小説を批評して、コナン・ドイル、ひいてはイギリス人がフランスの歴史をまるで知らぬといって批難しているのを見ましたが、狭い海一つへだてたフランスの歴史でさえそうだとすると、東洋のことに対する西洋人の知識などはどうも怪しいと判断するのが当然でありましょう。そこへ、もってきて、例のもっともらしい神秘化が行われるのだから、鼻につくこと一通りでありません。

とはいえ、コナン・ドイルは中々の学者であります。医者、人類学者、各種の収集家らが主人公になっている場合――ホームズその人が常にこれらを兼ねている共通の主人公であるが――氏の博識は、大抵の読者を驚かせるに足ると思います。

推理の算数的的確さと、それを潤飾する博識、これがコナン・ドイルのしんしょうであります。

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