行乞記
本文約7,100字 ・ 読了時間 約15分
あらすじ(AIが作成しました)
種田山頭火の日記『行乞記』は、禅の修行者である著者が各地を行乞して歩く日々の旅路を綴る。各地で親しい友人との再会や酒の愉しみを経て、自然の風景や季節の移ろいを感じながら、質素な旅の暮らしを送る様子を描く。土地の人々との交流や、山寺、安宿での一夜、時に体調不良に悩みつつも、俳句を詠みながら淡々と歩み続ける修行僧としての日常を、秋の風情と共に克明に記録している。
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八月廿八日
星晴れの空はうつくしかつた、朝露の道がすが/\しい、歩いてゐるうちに六時のサイレンが鳴つた、庵に放つたらかしいおいた樹明君はどうしたか知ら!
駄菓子のお婆さんが、よびとめて駄菓子を下さつた。
山口の農具展覧会行だらう、自転車と自動車とがひつきりなしにやつてくる。
山のみどりのこまやかさ、蜩のしめやかさ。
真長田村――湯ノ口近く――で、後からきた自動車がすつと止まる、そして洋服姿が出てきて、にこにこしながら近づく、敬君だ、まるで予期したやうな、約束したやうな邂逅だ、自動車に乗ることだけは断つて、今夜はゆつくり飲むことにする。
湯ノ口行乞、伊佐へ左折しないでまつすぐ大田へ、夕立がやつてきた、濡れて歩く、あんまり降るから、とある農家に雨やどりして、そこの老人と世間話をする、誰もが話すやうに不景気々々々。
十二時すぎにはもう敬治居にくつろぐことができた、敬君は御馳走こしらへにいそがしく、私は風呂水をくむ、奥さんも子供さんも留守だから、まるで其中庵の延長――物資の豊富はいはない――みたいなものだつた。
うまい酒(一週間ぶりの酒だ)うまい飯(敬君炊ぐところの)を腹いつぱい詰め込んだ。
大夕立、まことに大雨大雷だつた、これで二人の憂欝は流れ去つてしまつた。
敬君が跣足で尻端折で畠の草を取る、私は寝ころんで新聞を読む、ユカイ/\。
法衣の洗濯、一年ぶりの垢を洗つた、敬君に理髪して貰ふ、さつぱりした。
夜はまた酒、敬君は腹痛で注射をしてもらつたりしたが、私はぐつすり寝ることができた。
とにかくたのしい日であり夜であつた。
・みちは露草のつゝましい朝明け
さかのぼる水底の秋となつてゐる
小亀がういて秋暑い水をわたる
旅の法衣のはらへどもおちないほこり
つくり酒屋の柳いよ/\青し
・けふのおひるは草にすわつてトマトふたつ
昼寝のびやかだつたよ山とんぼ
・山をまへに流れくる水へおしつこする
・昼顔も私も濡れて涼しうなつた
行程五里、所得は十六銭と六合。
行乞について
八月廿九日
四時には二人とも起きた。
敬君はまた草取、私は風呂焚だ。