本文へ移動
TORENDIA

其中日記

本文約39,000字 ・ 読了時間 約79分

あらすじ(AIが作成しました)

種田山頭火の生活を記録したこの随筆は、隠遁生活を送る庵での日々の情景を綴る。酒と餅に支えられ、来客と交わす酒宴や周囲の自然を観照しながらも、常に経済的な窮乏や将来への不安、孤独と対峙する姿が描かれる。自戒を胸に刻み、雪景色や梅の開花といった季節の移ろいの中に己を見つめ直し、人生の意味を問い続ける日々をありのままに書き留める。巻末には俳句や自身の詩歌理論に関する考察も収める。

種田山頭火

🎧 まだ音声版はありません

リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 46

自戒三則

一、物を粗末にしないこと

一、腹を立てないこと

一、愚痴をいはないこと

誓願三章

一、無理をしないこと

一、後悔しないこと

一、自己に佞らないこと

欣求三条

一、勉強すること

一、観照すること

一、句作すること

一月一日 晴――曇。

明けましておめでたう。

九時帰庵、独酌。

賀状とり/″\。

午後、樹明居へ、御馳走になる、来客数人、なか/\賑やかであつたが、うるさくもあつた。

留守中、敬君来庵、すみませんでした。

うたゝ寝、覚めると暮れてゐた。

酒もうまいが餅もうまい、飯もありがたいが水もありがたい。

夜おそく八幡連中来庵、星城子、鏡子、井上、杉山さんの四人。

豚を鋤焼して飲む、ごろ寝したのは三時を過ぎてゐたらう。

一月二日 曇。

朝寝して、起きるとまた酒、豚汁はおいしかつた、さすがに井上さんはコツクだつたらしい。

堤さん、後を追うて来た、お土産として銘酒二本。

夕方、みんないつしよにタクシーで湯田温泉に遊ぶ、M旅館で賑やかに会食、近来になくハシヤいだ。

十時の汽車に乗るべく、またタクシーで、――私はたうとう愚劣きわまる酒乱患者となつてしまつた!

一月三日 曇。

茫々たり、漠々たり、昏々たり、沈々たり。

庵中独坐。

自己清算しろ、自己破産か! 自己決算か!

おのづからなる自壊作用!

――生きてゐたくない、死にたい――それも執着だ。

この寂寥、この憂欝、この虚無。

たへがたし、其中一人酔つぱらふ。

生きてゐる真実、食べることの真実、あはれ/\。

天地人一切の有象無象!

酒、酒、餅、餅、新年、新年。

老醜。――

一月四日 曇。

やゝ落ちつく。

午後、樹明君来庵、酒一杯、飯一杯。

夕方、敬君来庵、一升樽さげて。

同道して湯田へ、一浴して戻る、酒が残つてゐるのでそれだけ飲む。

熟睡安眠、夢も見なかつた。

一月五日 晴。

日本晴である、昼寝。

樹明君来訪、例の如く酔うてそれからそれへ、――馬鹿、阿呆。――

一月六日 雨――曇。

陰欝な一日。

餅があるので、鼠が来てゐるお正月(いつもはゐない、ゐつかない)。

考へる、――強く生きよ。

一月七日 曇。

或る青年来庵、間もなく樹明君来訪、三人でのんびり飲む。

咲いた、咲いた、机上の梅が、床の水仙が。

一人となればまた沈欝な一夜。

種田山頭火の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本