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TORENDIA

半七捕物帳の思い出

本文約1,500字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

コナン・ドイルの作品に刺激を受けた著者が、江戸時代の風俗や同心・岡っ引に関する知識を活かし、西洋風の探偵物語とは異なる独自の江戸式探偵物語の執筆を試みる過程を綴る。大正六年に『文芸倶楽部』で連載が始まった「半七捕物帳」の誕生の経緯や、執筆当時の状況を振り返るとともに、主人公である半七老人が架空の人物であることを明かしている。

岡本綺堂

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🎧 半七捕物帳の思い出 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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初めて「半七捕物帳」を書こうと思い付いたのは、大正五年の四月頃とおぼえています。そのころ私はコナン・ドイルのシャアロック・ホームスを飛び飛びには読んでいたが、全部を通読したことがないので、丸善へ行ったついでに、シャアロック・ホームスのアドヴェンチュアとメモヤーとレターンの三種を買って来て、一気に引きつづいて三冊読み終ると探偵物語に対する興味が油然と湧き起って、自分もなにか探偵物語を書いてみようという気になったのです。勿論その前にもヒュームなどの作も読んでいましたが、わたしを刺戟したのはやはりドイルの作です。

しかしまだ直には取りかかれないので、更にドイルの作を猟って、かのラスト・ギャリーや、グリーン・フラグや、キャピテン・オブ・ポールスターや、炉畔物語や、それらの短篇集を片端から読み始めました。しかし一方に自分の仕事があって、その頃は『時事新報』の連載小説の準備もしなければならなかったので、読書もなかなか捗取らず、最初からでは約一月を費して、五月下旬にようやく以上の諸作を読み終りました。

そこで、いざ書くという段になって考えたのは、今までに江戸時代の探偵物語というものがない。大岡政談や板倉政談はむしろ裁判を主としたものであるから、新に探偵を主としたものを書いてみたら面白かろうと思ったのです。もう一つには、現代の探偵物語をかくと、どうしても西洋の摸倣に陥り易い虞れがあるので、いっそ純江戸式に書いたらば一種の変った味のものが出来るかも知れないと思ったからでした。幸いに自分は江戸時代の風俗、習慣、法令や、町奉行、与力、同心、岡っ引などの生活に就ても、一通りの予備知識を持っているので、まあ何とかなるだろうという自信もあったのです。

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