TRENDIA CLASSIC

其中日記

種田山頭火

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自省自戒

節度ある生活、省みて疚しくない生活、悔のない生活。

孤独に落ちつけ。――

物事を考へるはよろしい、考へなければならない、しかしクヨクヨするなかれ。

貧乏に敗けるな。――

物を粗末にしないことは尊い、しかも、ケチケチすることはみじめである、卑しくなるな。

酒を味へ。――

うまいと思ふかぎりは飲め、酔ひたいと思うて飲むのは嘘である。

水の流れるやうに、雲の行くやうに、咲いて枯れる雑草のやうに。

自然観賞、人生観照、時代認識、自己把握、沈潜思索、読書鑑賞。

句作、作つた句でなくして生れた句、空の句。

『身に反みて誠あれば楽これより大なるはなし』(孟子)

八月一日 晴。

早起して散歩した、夏山の朝のよろしさ。

省みて恥多く悔多し。

借金ほど嫌なものはない、その嫌なものから、私はいつまでも離れることが出来ない。

午後また散歩、W店でまた一杯。

暑い暑い、うまいうまい、ありがたいありがたい。

モウパツサンを読む、彼の不幸を思ふ。

八月二日 晴。

けさも早起して散歩。

おちつけ、おちつけ。

身辺整理、といふよりも身心整理。

ライクロフトの手記を読みなほす、ギツシングと私との間には共通なものがあるらしい。

夜、しみ/″\秋を感じた。

どうやらかうやら私はスランプから抜け出たらしい。

とにかく銭がないことはさみしい、いや、悩ましい、払はなければならないものが払へないのはほんたうに苦しい。

八月三日 晴。

早起、仰いで雲を観、俯して草を観る。

Sへ。――

汽車賃がないから歩いて行く、樹明君に事情を話して、手土産としてラツカース二罎借りる。……

寂しい悲しい訪問だつた。

泊る、東京から小さいお客さんが数人来てゐてうるさかつた。

酒はうまかつた。

八月四日 晴。

朝早く防府へ。――

佐波川で泳ぐ。

M君を訪ねる。

午後、徳山へ。――

途中、富海に下車して、追憶をあらたにした。

酔うてゐる間だけ楽しい。

白船君を訪ふ、忙しいので宿屋に泊めて貰ふ、たゞ/\酔うてゐる間だけが楽しい。

八月五日 晴。

午近くなつて帰途につく。

再び富海に下車して海に浸る。

白船君は落ちついてゐる、漣月君は元気いつぱいだ、さて私は。――

三田尻駅で、東路君に逢ふ、飲む、酔ふ、泊る。

八月六日 晴。

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