本文へ移動
TORENDIA

かなしき女王

本文約3,600字 ・ 読了時間 約8分

あらすじ(AIが作成しました)

海峡での激戦を生き延びたウルリックとコンラは、ミストの島の女王スカァアに捕らえられる。女王はかつての恋人クウフリンを慕い、二人の男に死の間際で恋の歌をうたうよう命じる。ウルリックは拒絶するが、コンラは美しき恋人への想いを詩に込めてうたい上げる。その詩を聞いた女王は、恋を知らぬウルリックを放逐し、恋の真髄に触れたコンラには過酷な処刑を命じる。本作は、死にゆく琴師の最期と愛の記憶を描く。

フィオナ・マクラウド Fiona Macleod

速度
🎧 かなしき女王 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 5

ミストの島スケエの城の高い壁のかげに二人の男が縛られて倒れていた。

一人は「はげ」と綽名されたウルリック、一人は琴手コンラであった。多くの櫓船が海峡に沈んだ時、ゲエルもゴールも血に赤い波に沈んで、ただこの二人だけが生き残った。

長いあいだ二人は波の上に一本の同じ檣の上に揺られていた――それは「長髪」と綽名されたスヴェンが一艘ごとに二十人を乗り組ました櫓船二十を従えて北の島国から渡って来た「死鴉」の檣であった。

「無言」と綽名されたファルカは一艘に十人を乗り組ました四十の櫓船を以て彼に当った。

彼等は日が南にある頃から西に低くなるまで戦った。もう其時は「死鴉」と「掃泡」と二艘だけになった。この戦のあいだ、ウルリックはスヴェンの側に坐って死の歌と剣の歌をうたっていた。コンラはファルカの傍に在って勝利の威勢のよい歌をうたっていた。

多くの船が海中に血まみれの混乱の中に出会った時、槍は暴風の森の大枝小枝の如く上下した、人々の髪は血に真赤な顔と狂猛な眼の上にまっ黒くよじれて垂れていた、スヴェンは敵の「掃泡」に飛び乗って、自分に向って槍を突き出した槍手の首をちょん切った、首は海に墜ち込んで、首のない人間が中気のように顫えて的のない槍をゆらゆらと動かしていた。

しかしこの働き中にスヴェンはよろけた、ファルカは彼に槍を突き通した。槍はスヴェンを檣に突き刺した。その時一本の矢が海を渡って来てスヴェンの眼に当った、彼はそれきり眼が見えなくなった。「掃泡」が沈み、それに引かれて「死鴉」が沈み、二人の王は出会った、しかしファルカはもう其時はあっちこっちと揺り上げられる重い死魚のようであった、スヴェンはその死体を自分の愛していたガンヒルドの死体かと思って、それに接吻しようとしたが、彼を檣にくぎづけにした槍と七本の矢のためにそれも出来なかった。

月がのぼった時、水は真白に凪いでいた。海の中ほどを大きな影が北に向いて動いて行った、それは旅に行く青魚の数万の群であった。

「はげ」のウルリックが檣から沈みかけた時、琴手コンラはウルリックの髪の毛を持って引上げて息をつかせてやった、それでウルリックは生きていた。

フィオナ・マクラウド Fiona Macleodの他の作品

🎧
最後の晩餐
フィオナ・マクラウド Fiona Macleod ・ 約14分
浅瀬に洗う女
フィオナ・マクラウド Fiona Macleod
琴
フィオナ・マクラウド Fiona Macleod
精
フィオナ・マクラウド Fiona Macleod
ウスナの家
フィオナ・マクラウド Fiona Macleod
🎧
海豹
フィオナ・マクラウド Fiona Macleod ・ 約10分
🎧
魚と蠅の祝日
フィオナ・マクラウド Fiona Macleod ・ 約8分
🎧
髪あかきダフウト
フィオナ・マクラウド Fiona Macleod ・ 約16分
🎧
剣のうた
フィオナ・マクラウド Fiona Macleod ・ 約21分
🎧
女王スカァアの笑い
フィオナ・マクラウド Fiona Macleod ・ 約10分
🎧
約束
フィオナ・マクラウド Fiona Macleod ・ 約12分
🎧
漁師
フィオナ・マクラウド Fiona Macleod ・ 約17分

同じジャンルの朗読つきの本