歌の話
本文約34,800字 ・ 読了時間 約70分
あらすじ(AIが作成しました)
短歌の成り立ちや歴史、そして歌が持つ精神性を論じる。古来の神への誓いや願いを込めた言葉から始まり、時代を経て整頓されてきた詩形であると説く。神武天皇の時代に遡る片歌の起源や形式的な特徴を挙げ、後の和歌における秋の感情表現や、橘曙覽らに代表される江戸時代の歌人が表現した子供や生活への眼差しを通じ、歌の本質である心の内を相手に詳しく伝える技法と変遷を紐解く。
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歌の話について
この度、高濱虚子さん・柳田國男先生[#ルビの「やなぎだくにをせんせい」はママ]と御一しょに、この一部の書物を作ることになりました。その高濱さんの御領分の俳句と同樣に、短歌といふものは、ほんとうに、日本國民自身が生み出したもので、とりわけ、きはめて古い時代に、出來上つてゐたものであります。さうして、それが偶然、私の先生でもあり、またあなた方のこの文庫におけるおなじみでもある、柳田國男先生[#ルビの「やなぎだくにをせんせい」はママ]がお書きの諺の成り立ちとも、原因が竝行してゐるのは、不思議な御縁だとおもひます。
一、短歌の起り
短歌は、唯今では一般に、うたといつてゐます。けれども大昔には、うたと名づくべきものが多かつたので、そのうち、一番後に出來て、一番完全になつたものが、うたといふ名を專らにしたのであります。
かういふと、不思議に思ふ方があるかも知れません。あなた方の御覽の書物には、たいてい短歌の起りを、神代のすさのをの尊のお作からとしてゐるでせう。もちろんこれは、古くからのいひ傳へで、あなた方が、古代と考へてゐられる奈良朝よりも、もつと/\以前から、さう信じてゐたのです。だからその點において、そのお歌が、第一番のものでなくとも、何も失望する必要はありません。
短歌の出來るまでには、いろんな形をとほつて來てゐます。第一に、世間の人は、短い單純なものが初めで、それが擴がつて、長い複雜なものとなるといふ考へ方の、癖を持つてゐます。ところが、物質の進化の方面と、精神上のことゝは反對で、複雜なものをだんだん整頓して、簡單にして行く能力の出來て來ることが、文明の進んでゆくありさまであります。短歌などもそれで、日本の初めの歌から、非常な整頓が行はれ/\して、かういふ簡單で、思ひの深い詩の形が、出來て來たのであります。
二、諺と、歌と