TRENDIA CLASSIC
五重塔
幸田露伴
1 / 72
其一
木理美しき槻胴、縁にはわざと赤樫を用いたる岩畳作りの長火鉢に対いて話し敵もなくただ一人、少しは淋しそうに坐り居る三十前後の女、男のように立派な眉をいつ掃いしか剃ったる痕の青々と、見る眼も覚むべき雨後の山の色をとどめて翠の匂いひとしお床しく、鼻筋つんと通り眼尻キリリと上り、洗い髪をぐるぐると酷く丸めて引裂紙をあしらいに一本簪でぐいと留めを刺した色気なしの様はつくれど、憎いほど烏黒にて艶ある髪の毛の一ト綜二綜後れ乱れて、浅黒いながら渋気の抜けたる顔にかかれる趣きは、年増嫌いでも褒めずにはおかれまじき風体、わがものならば着せてやりたい好みのあるにと好色漢が随分頼まれもせぬ詮議を蔭ではすべきに、さりとは外見を捨てて堅義を自慢にした身の装り方、柄の選択こそ野暮ならね高が二子の綿入れに繻子襟かけたを着てどこに紅くさいところもなく、引っ掛けたねんねこばかりは往時何なりしやら疎い縞の糸織なれど、これとて幾たびか水を潜って来た奴なるべし。
幸田露伴の他の作品
TRENDIA CLASSIC
菖蒲湯
幸田露伴
菖蒲湯
幸田露伴 ・ 約1分
TRENDIA CLASSIC
囲碁雑考
幸田露伴
囲碁雑考
幸田露伴
TRENDIA CLASSIC
淡島寒月のこと
幸田露伴
淡島寒月のこと
幸田露伴
TRENDIA CLASSIC
淡島寒月氏
幸田露伴
淡島寒月氏
幸田露伴
TRENDIA CLASSIC
印度の古話
幸田露伴
印度の古話
幸田露伴
TRENDIA CLASSIC
運命は切り開く
もの
幸田露伴
運命は切り開くもの
幸田露伴
TRENDIA CLASSIC
学生時代
幸田露伴
学生時代
幸田露伴
TRENDIA CLASSIC
鵞鳥
幸田露伴
鵞鳥
幸田露伴
TRENDIA CLASSIC
観画談
幸田露伴
観画談
幸田露伴
TRENDIA CLASSIC
雁坂越
幸田露伴
雁坂越
幸田露伴
TRENDIA CLASSIC
運命
幸田露伴
運命
幸田露伴
TRENDIA CLASSIC
菊 食物として
の
幸田露伴
菊 食物としての
幸田露伴