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TORENDIA

学生時代

本文約2,600字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

十六七の頃に通った漢学の私塾の様子と、そこで過ごした学生生活を綴る。規模が小さく道徳的で人情的な繋がりで維持されていた塾で、生徒は各自が自習した上で、輪講や復文、闘文闘詩などを通じて互いに励み合いながら切磋琢磨した。著者はこの塾での学びや、仲間との議論、あるいは荘子の書写に励んだ当時の思い出を回想し、厳しくも活気があった私塾の風習や学習環境のあり方を詳しく描写する。

幸田露伴

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🎧 学生時代 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

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わたくしの学生時代の談話をしろと仰ゃっても別にこれと云って申上げるようなことは何もございません。特にわたくしは所謂学生生活を仕た歳月が甚だ少くて、むしろ学生生活を為ずに過して仕舞ったと云っても宜い位ですから、自分の昔話をして今の学生諸君に御聞かせ申そうというような事は、実際ほとんど無いと云ってもよいのです。ですから平に御断りを致します。何処ぞの学校の寄宿舎にでも居ったとか何とかいう経歴がありましたら、下らない談話でも何でも、何か御話し致しましょうけれども。

強て何か話が無いかとお尋ねならば、仕方がありません、わたくしが少時の間――左様です、十六七の頃に通学した事のある漢学や数学の私塾の有様や、其の頃の雑事や、同じ学舎に通った朋友等の状態に就いてのお話でも仕て見ましょう。今でも其の時分の面影を残して居る私塾が市中を捜したらば少しは有るでしょうが、殆ど先ず今日は絶えたといっても宜敷いのです。私塾と云えばいずれ規模の大きいのは無いのですが、それらの塾は実に小規模のもので、学舎というよりむしろただの家といった方が適当な位のものでして、先生は一人、先生を輔佐して塾中の雑事を整理して諸種の便宜を生徒等に受けさせる塾監みたような世話焼が二三人――それは即ち塾生中の先輩でして、そして別に先生から後輩の世話役をしろという任命を受けて左様いう事を仕て居るというのでも無いのですが、長らく先生の教を受けて居る中に自然と左様いう地位に立たなければならぬように、自然と出来上がった世話役なので、塾は即ち先生と右の好意的世話役の上足弟子とで維持されて居る訳なのです。

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