TORENDIA
囲碁雑考
幸田露伴
TORENDIA
囲碁雑考
本文約6,400字 ・ 読了時間 約13分
あらすじ(AIが作成しました)
支那の古伝説に由来する囲碁は、論語や孟子にも言及があり、古くから発達した遊技である。本書は、棋経や囲棊賦といった文献の引用を通じて、盤上の戦術、君子としての対局姿勢、そして兵法にも通じる奥深い勝負の理を説く。多様な棋譜や論考を網羅し、盤上の攻防を古今の政局や戦の教訓と重ね合わせることで、技術の習得に留まらない、思考の深みと棋道の精神を考察する。
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棊は支那に起る。博物志に、尭囲棊を造り、丹朱これを善くすといひ、晋中興書に、陶侃荊州の任に在る時、佐史の博奕の戯具を見て之を江に投じて曰く、囲棊は尭舜以て愚子に教へ、博は殷紂の造る所なり、諸君は並に国器なり、何ぞ以て為さん、といへるを以て、夙に棊は尭舜時代に起るとの説ありしを知る。然れども棊の果して尭の手に創造せられしや否やは明らかならず、猶博物志の老子の胡に入つて樗蒲を造り、説文の古は島曹博を作れりといふが如し、此を古伝説と云ふ可きのみ。
但棊の甚だ早く支那に起りしは疑ふ可からず。論語に博奕といふ者有らずやの語あり、孟子に奕秋の事あり、左伝に太叔文子の君を視る奕棊に如かず、其れ何を以て免れん乎の語あり。特に既に奕秋の如き、技を以て時に鳴る者ありしに依れば、奕の道の当時に発達したるを察知するに足る。仮令尭の手に成らずとするも、奕は少くも周若くは其前に世に出でたるものなること知る可し。