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TORENDIA

武士道の山

本文約1,600字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

武士道を登るべき一つの山として捉え、その居住者の精神性や社会的役割に基づいて五つの階級に区分する。粗野な軍人である野猪武者から始まり、権威を好む俗吏や学問を嗜む新参者、指導者階級を経て、最後には至高の地帯に至るまでを記述する。著者は階級が上がるにつれて変容する武士の振る舞いや精神的態度の違いを丁寧に観察し、最も高所に住む者たちが持つ柔和な慈愛や、他者に感化を与える無邪気な力について詳述し、武士道の本質を論じる。

新渡戸稲造

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🎧 武士道の山 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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武士道は斜面緩かなる山なり。されど、此処彼処に往々急峻なる地隙、または峻坂なきにしも非らず。

この山は、これに住む人の種類に従って、ほぼ五帯に区分するを得べし。

その麓に蝟族する輩は、慄悍なる精神と、不紀律なる体力とを有して、獣力に誇り、軽微なる憤怒にもこれを試みんと欲する粗野漢、匹夫の徒なり。彼らはいわゆる「野猪武者」にして、戦時には軍隊の卒伍を成し、平時には社会の乱子たり。

更に歩を転ずれば、ここに他種の人の住するを見る。山麓叢林の住民よりも進歩したる一階級の民なり。彼らは獣力に荒まず。野猪の族と異りて、放肆なる残虐また悪戯を楽しみとせずといえども、なおその限られたる勢力を行わんことを喜びとなし、傲岸尊大にして、子分に対しての親分たるを好む。その最も快とするところは、自己の威信あるを感ずること、即ち人より服従せらるる事なり。最も彼れを憤懣せしむるものは、その権力の侵害せらるること、即ち抑圧を蒙ることなり。彼らは戦場に在りては勇敢なる下士となり、平時には最も厭うべき俗吏となる。

この類の住地よりも高くして更に一帯あり。その住民は、野獣的にもあらず、また傲慢にもあらず。多少の学術を愛し、書を読み――多くは経済法律の初歩を学びて、しかして喋々大問題を論ず。その眼界は法律政治の外に出でず。その文学は小説と三文詩歌とに限られ、科学は新聞紙上にて読むものの以外に少しも留意せず。彼らの態度は、「野猪」の粗野と、彼らの直下にある者の厳峻とを脱して、その仲間の者には便安に、上級者に対しては窮屈に、下級者に対しては威張る。彼らは真髄武士道の新参者と称すべく、その数や多大なり。彼らの中よりして軍隊の将校を出し、また政府の事務を掌るの公吏を出す。

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