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TORENDIA

震災日誌

本文約19,500字 ・ 読了時間 約40分

あらすじ(AIが作成しました)

大正十二年九月一日、関東地方を襲った未曾有の大地震について、著者が直接見聞した体験を綴る記録。小石川の自邸で被災した著者は、家屋の損壊状況や家族の避難、地震後に発生した火事への対応を克明に記す。さらに、周囲に渦巻く不穏な噂や避難生活の困窮、そして数多くの焼死体が放置された惨状を目の当たりにし、文明の要ともいえる史料や記録が震災によって失われていく過程を、歴史学者としての視点を交えつつ描き出す。

喜田貞吉

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大正十二年九月一日関東地方に起った大地震は、未曾有の大災害を東京・横浜その他の都邑に及ぼした。いずれこの大変事については、新聞・雑誌が争うて精しい報道に努めるであろうし、また纏まった書物も後には少からず発行されることであろうから、一般のことはすべてこれを省略して、ただ自分が直接見聞関知したことのみを、今日から筆に任せて書きとめておこうと思う。

九月一日夜、炎煙東京の半ばを蔽うの時、瓦落ち壁崩れた小石川東青柳町の宅にて。

●土塵濛々  九月一日(土)震災第一日。『社会史研究』九月号の校正は一昨日をもって終え、十月号の編輯に着手したのは昨日の午後であった。「蝦夷の宝器鍬先の考」の一編はすでに出来ている。「伊勢人考」も旧稿を捻ねくって間に合わすこととして、いま一編短いものをと昨夕方から書斎に籠って、ほとんど夜を徹して寝床の中で、「紀伊に特有の何楠といふ人名」という小編を書き上げたのは朝の四時ごろであった。それからヤット眠りについて、九時ごろに起き出て、枕頭には例によって多くの参考書やら、寄稿家諸氏からお預りの原稿やらを、すべて開けっぱなしのままに、また寝床も延べっぱなしのままに、朝食後隣家の歯科医M君をお訪ねした。

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