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TORENDIA

安達ヶ原の鬼婆々(餘白録)

本文約520字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

大和の榛原町をはじめ、武蔵や豊前に伝わる安達ヶ原の鬼婆々伝説について論じる。旅人を喰らうという伝承の源流をたどると、平兼盛が源重之の妾たちを鬼に見立てて揶揄した和歌の詞書きに行き着く。著者は、地名の縁故により各地へ広がった鬼伝説の真相が、本来は宮城県の秋保温泉付近にあった黒塚の逸話に由来することを指摘し、言葉の遊戯から生まれた物語がいかにして各地に定着し伝播していったのかを考察する。

喜田貞吉

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🎧 安達ヶ原の鬼婆々(餘白録) / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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去る五月の中旬、大和の榛原町に行つた時、同町字足立といふ部落が、鬼筋だといふ説について、土地の人に尋ねて見たところが、昔こゝに安達ヶ原の鬼婆々が居つたといふ話があると教へてくれた。奧州安達ヶ原から、鬼婆々は同じ地名の縁故で、こゝまでも飛んで行つたのだ。武藏の足立郡にも、同じ話のあることが、古い地誌に見えて居る。豐前企救郡の足立村にも、同じ説があるといふ。

鬼婆々の話の元は、安達ヶ原の黒塚のあるじが鬼であつて、旅人を取つて喰つたといふのであるが、更に其話の火元は、かの平兼盛の歌の、「みちのくの、安達ヶ原の黒塚に、鬼こもれりといふは誠か」といふ歌だ。而も其の歌は、其の詞書きによると、みちの國名取の郡黒塚といふ所に、源重之の妾が大勢居るといふ噂を聞いて、其の妾を鬼に見立てゝ、からかつたに過ぎないので、安達ヶ原ではなかつたのだ。安達ヶ原は、鬼と言はんが爲の言葉の遊戯に外ならぬ。本當の黒塚は、今の仙臺在秋保温泉のあたりにあつた。大和物語に、「名取の御湯といふことを、常忠の君の女の讀みたると云ふなむ、これ黒塚のあるじなりける」とある。

それが本當の安達ヶ原の鬼の話になり、武藏までも、大和までも、更に豊前までも飛んで行く。恐ろしこ事だ。(喜)

完

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